7月6日、「全東信(ぜんとうしん)」という会社が潰れました。全国の飲食店に、カード売上を「先払い」してくれていた会社です。
この倒産で、いま多くの飲食店が苦しんでいます。入るはずだった売上が入らない。カード決済が使えない。なぜ、そんなことが起きたのか。
この特集では、「そもそも全東信って何の会社?」というところから、「同じことはまた起こるのか?」まで、ひとつずつ、できるだけ簡単な言葉で説明していきます。読み終わる頃には、この事件の全体像と、自分の店を守るためにやることが、はっきり見えているはずです。
全東信とは、どんな会社だったのか
意外に思うかもしれませんが、全東信のはじまりは大阪の飲食店の集まりでした。1987年、「大阪南飲食事業協同組合」という飲食店の組合として生まれています。
もともとは、店同士が助け合うための組織です。飲食店の困りごと——特に「お金の入りが遅い」という悩み——を解決する存在として支持を集め、1999年には全国展開を開始しました。勢いは止まらず、2000年代には東京の赤坂と京橋に自社ビルを構えるまでになります。2005年には、業界で初めて飲食店向けのリボ払いサービスを始めるなど、「飲食×お金」の分野では常に先を走る会社でした。
2006年に株式会社全東信となり、資本金は45億円。契約店の数は、公表ベースで約20万店。その多くが飲食店でした。
つまりこの会社は、40年ちかく「飲食店の味方」の顔をして、業界のすぐ隣にいた存在だったのです。歴史があって、自社ビルがあって、みんなが使っている。疑う理由が、どこにも見当たらない会社でした。だからこそ、被害はここまで広がったのです。

商売の中身——「売上の先払い」で稼ぐ仕組み
全東信の商売を一言でいうと、「売上の先払い屋さん」です。
お客さんがカードで払ったお金は、すぐには店に入りません。カード会社から入金されるまで、ふつう2週間〜1か月かかります。でも店は待ってくれません。明日も食材を買い、月末には家賃と給料を払わなければいけない。「売上はあるのに、手元にお金がない」——飲食店なら誰でも知っている、あの苦しさです。
そこで全東信は「そのお金、うちが先に払いますよ」と提案しました。たとえば、もし100万円のカード売上があったとすると、全東信が手数料を差し引いた額を先に店へ振り込み、あとでカード会社から100万円を受け取って回収する——そんなイメージです。店は手数料を払う代わりに売上をすぐ使え、全東信は手数料で稼ぐ。
ちなみに、こういう「あとで入るお金を、手数料を取って先に現金にする」商売を、金融の世界ではファクタリングと呼びます。全東信がやっていたのは、その「カード売上版」でした。仕組みだけ見れば、双方にトクのある商売です。ただしこの仕組みには、ひとつだけ大前提がありました。「先払いする会社が、絶対に潰れないこと」です。

なぜ飲食店が苦しんでいるのか
お客さんのお金は、全東信の中を通ってから店に届きます。ということは、通っている間、あなたの売上は全東信の手元にあるということです。
ここに、この事件のいちばん大事な種明かしがあります。店は毎晩、レジを閉めるたびに、その日のカード売上を全東信に預けていた——言い方を変えれば、担保もなし、利息もなしで貸していたのです。
銀行がお金を貸すときのことを考えてみてください。相手の決算書を調べ、担保を取り、返せそうにない相手には貸しません。ところが飲食店は、契約書にサインした日から、相手の中身を一度も調べることなく、毎日売上を預け続けていました。その銀行よりずっと無防備な「貸し手」だったのです。

そして7月6日、借り手が突然いなくなりました。まだ店に払われていなかった売上は「破産債権(はさんさいけん)」という扱いになります。かみ砕いて言うと、返してもらう権利はあるけれど、いつ・いくら返るか分からない、順番待ちのお金です。しかも列の先頭には税金や従業員の給料などが並ぶルールなので、一般の債権者である店に回ってくる分は、正直なところ多くは期待できません。これが「苦しんでいる」の正体です。
もしあなたの店が全東信を使っていたなら、最低限この3つだけ、今日やってください。①端末を止める(カードもQRも) ②最後の入金日以降の売上を集計する ③明細と契約書を捨てずに残す。
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出典:東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203040_1527.html /日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF065HT0W6A700C2000000/ /ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/394610 /中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2026/260710.html
この続きは8章・約4,300字。この事件の核心と、あなたの店の守り方のすべてを書いています。
- 何が会社を追い詰めたのか(スマホ決済の波とコロナ)
- 隠されていた「20年間のウソ」——粉飾605億円の中身
- なぜ、ウソを続けられてしまったのか
- 被害はどこまで広がっているのか
- 対策① いますぐ、お金をつくる
- 対策② 二度と、巻き込まれない形にする
- 対策③ 決済会社に聞く「4つの質問」
- 同じことは、また起こるのか