牛丼大手3社の決算が出そろいました。ゼンショーホールディングス、松屋フーズホールディングス、吉野家ホールディングス。3社とも増収です。
ここ数年、外食の決算は「増収」がほぼ前提になりました。人流が戻り、値上げが通り、客単価が上がったからです。だから、増収そのものはもう手柄になりません。
問題はその先です。売上が伸びたぶん、利益もちゃんと伸びたのか。
ここで、3社の景色がはっきり分かれました。営業利益率——売上のうち何%が営業利益として残ったか——を並べると、上がったのは松屋1社だけです。ゼンショーはむしろ下がり、吉野家は横ばいでした。
この特集では、同じ市場・同じコスト環境にいた3社が、なぜ「残る利益」で割れたのかをほどいていきます。そして最後に、規模がなくても真似できるのはどれかを、店の言葉に翻訳します。
まず、3社の数字を1枚で
事実から並べます。
ゼンショーホールディングス(2026年3月期)
- 連結売上高 1兆2,640億円(前期比+11.2%)
- 営業利益 814億円(同+8.4%)
- 店舗数 10,486店舗(連結)
- 日本の外食として初めて売上1.2兆円を超えた
松屋フーズホールディングス(2026年3月期)
- 連結売上高 1,844億円(前期比+19.6%)
- 営業利益 75億円(同+72.3%)
- 店舗数 1,573店舗(連結)
- 営業利益は過去最高を更新
吉野家ホールディングス(2026年2月期)
- 連結売上高 2,256億円(前期比+10.1%)
- 営業利益 80億円(同+10.7%)
- 店舗数 2,886店舗(連結)
- 海外と「はなまる」が利益を牽引
規模で見れば、ゼンショーが他の2社を合わせても届かない水準にいます。売上1.2兆円は、松屋と吉野家を足して3倍してもまだ足りません。
けれど、規模の順番と、利益の伸びの順番は一致していません。
なぜ「全社増収」なのに、利益率で差がついたのか
売上と営業利益から営業利益率を計算すると、こうなります(※各社の公表値から本記事で算出)。
- ゼンショーHD 約6.6% → 約6.4%(低下)
- 松屋フーズHD 約2.9% → 約4.1%(上昇)
- 吉野家HD 約3.5% → 約3.5%(横ばい)
同じことは、ブランド単位で見ても起きています。牛丼3ブランドはそろって増収でしたが、利益はすき家と吉野家が減り、松屋だけが増えました。会社の規模でも、売上の伸びでもなく、ここで並びが変わっています。
数字が小さいので見落としやすいのですが、飲食業の1ポイントは重い数字です。売上1,844億円の松屋にとって、1.2ポイントの改善は十数億円規模の利益に相当します。
そして、ここが今回いちばん面白いところです。
松屋は、原価率が悪化しています。
米価とエネルギー費の上昇で、原価率は36.1%から36.8%へ、0.7ポイント悪化しました。コストは、間違いなく重くなっている。それでも営業利益率は上がった。
つまり松屋は、上がった原価を、別のどこかで取り返しているということです。取り返した場所がわかれば、この決算の意味は一気に変わります。そしてそれは、規模の話ではありません——
この先の6章・約3,900字で、3社の戦略の中身と、そこから店に持ち帰れるものを書いています。
- 松屋は何をして、営業利益を7割増やしたのか
- すき家の減益は、本当に「事件のせい」だけなのか
- 吉野家の19四半期連続プラスは、何を売った結果か
- 91億円のラーメン買収が意味していること
- 規模がなくても真似できるのは、どれか
- 2027年、最大の変数は米だ
