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外食大手・チェーンの最新動向と経営への影響

経営の論点/大手・チェーン動向
最終更新:2026年7月28日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年7月時点で、上場外食企業の決算発表が相次いでいます。ブロンコビリーは2026年12月期第2四半期累計で営業利益が前年同期比57.5%増の19億2900万円となり、既存店売上高は107.7%と好調に推移。通期の営業利益予想を30億円から39億7000万円(前期比35.5%増)へ上方修正し、年間配当も28円から40円へ増配しました。

一方でくら寿司は2026年10月期中間決算で売上高6.5%増ながら営業利益14.7%減という「増収減益」に陥り、原材料費・人件費の上昇や高価格帯業態への先行投資が利益を圧迫しました。サイゼリヤも2026年8月期第3四半期は売上高17.5%増・営業利益25.6%増と大幅な増収増益を達成しましたが、この好調な決算を背景に9月以降の価格改定検討を表明しました。実現すれば約6年ぶりの本格的な価格見直しとなり、「値上げをしない店」として知られてきた同社の転換は業界に驚きを与えています。会社側は円安や原材料費・物流費・人件費の上昇圧力が製造直販モデルによる効率化だけでは吸収しきれなくなりつつあると説明しており、全国一律ではなく立地別の価格設定も選択肢とされています。増収増益で余裕がある時こそ、価格に手を付ける判断が下されている点は注目に値します。

ペッパーフードサービスは2026年12月期第1四半期に営業利益8900万円(前年同期は2400万円の損失)と黒字転換。「いきなり!ステーキ」は過剰出店やコロナ禍で店舗数がピーク時の3分の1程度まで縮小していましたが、既存店対策が奏功し、長期低迷からの再生には数年単位の構造改革が必要という典型例になっています。

多業態経営を進めるクリエイト・レストランツ・ホールディングスは220超のブランド・1100店舗以上を抱え、コスト構造見直しにより過去最高益を更新。トリドールホールディングスは「コナズ珈琲」を2026年6月時点で全国55店舗まで拡大し、グループNo.2ブランドに育てています。松屋フーズは7月27日、アリババグループ運営の「AliExpress」に公式ショップを開設し、看板の牛めしセットやカレー・惣菜を国内向けに展開。自社EC・既存モールに続く新たな販路として、家庭向け冷凍・惣菜需要の取り込みを狙う動きです。

サプライチェーン面では、ニチレイが不正アクセスによるシステム障害で7月13日から冷蔵倉庫の入出庫・冷凍食品出荷業務が停止し、KFCの品切れ・時短営業、くら寿司・イオン・ヨークベニマルなどへの欠品や配送遅延が発生しましたが、7月24日に全拠点で受発注制限が解除され、約10日余りで通常稼働に復旧しています。ゼンショーHDは「すき家」「はま寿司」向けに岡山県笠岡市へ食品工場を新設すると発表するなど、供給力強化とリスク分散を並行して進めています。

業界全体の動向としては、日本フードサービス協会の調査で2026年6月度の外食産業売上高は前年同月比3.3%増となったものの、客数は0.8%増にとどまり、客単価上昇(2.4%増)が数字を支える構図が続いています。台風の接近と土日の少ない曜日回りが重なり、ファミリーレストランや居酒屋など飲酒業態で客足が伸び悩んだ一方、ファストフードは5.1%増と堅調でした。焼肉店・ラーメン店の倒産が過去最多を更新する一方、大手は成長戦略とリスク対応を並行させており、明暗が同時に進行しています。


構造・原理:規模の大きさは何を分けるのか

第一に、原価・人件費の上昇を吸収できるかどうかは売上規模だけでは決まりません。くら寿司の中間決算では売上の伸び率を営業利益の下げ幅が大きく上回った一方、ブロンコビリーやサイゼリヤは増収と増益を両立させています。差は値上げ・原価管理の精度と価格転嫁のタイミングに現れます。ただしサイゼリヤの事例が示すように、好調な数字が出ている企業ほど効率化の限界を早めに察知し、値上げという選択肢を前もって準備している点は共通しています。増収増益は「値上げをしなくていい理由」ではなく「値上げに耐えられる交渉力を持てている状態」と捉えることもできます。

第二に、長期低迷からの再生は既存店の底打ちから始まります。いきなり!ステーキの黒字転換は、過剰出店の整理とコスト構造の見直しを経て既存店の売上・客数が計画を上回るところまで来た結果です。派手な新規出店ではなく既存店を地道に立て直す積み重ねが業績改善の中心になった点は、規模の大小を問わず共通する再生プロセスです。

第三に、主力業態や既存店頭売上への依存リスクに備え、第二の収益源を育てる手法が広がっています。コナズ珈琲の分社化による成長、松屋フーズの海外系ECモール出店はいずれも、単一チェーン・単一販路への依存から脱却するモデルです。この種の投資局面ではコストがかさみやすく、補助金・資金繰りの視点が欠かせません。

第四に、サプライチェーンの一極集中リスクが今回のニチレイ障害で明確になりました。KFCという規模もオペレーション力も指折りの企業が、自社に原因のない委託先の障害だけで9日間にわたり品切れ・時短営業を強いられた事実は、規模がこの種のリスクへの保険にならないことを示しています。仕入れ先を1社に決めるという行為は、その先に続く長い供給網を見ないまま丸ごと引き受ける行為でもあります。ゼンショーHDの西日本工場新設は、供給力確保と災害リスク分散を同時に狙うものであり、人手・賃金と並ぶ見えにくい経営リスクへの対応例といえます。

第五に、外食産業全体の月次データが示すように、客数は天候や曜日回りといった制御できない要因に左右されやすく、客単価の上昇で数字を支える構図が定着しつつあります。これは大手だけの現象ではなく、集客・販促の設計を「客数頼み」から「客単価と客数の両輪」へ切り替える必要性を示しています。新業態・トレンドの飽和が進む中では、既存の強みをどこまで残しどこを変えるかという判断が問われ続けています。


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