7月13日、ケンタッキーフライドチキンの店頭からチキンが消えました。オンライン注文もモバイルオーダーも止まり、営業時間を短縮した店もあります。
でも、サイバー攻撃を受けたのはKFCではありません。攻撃されたのは、食材を運んでいたニチレイでした。
同じことが、くら寿司でも、イオンでも、ヨークベニマルでも起きました。自分の会社のパソコンは1台も壊れていない。従業員が怪しいメールを開いたわけでもない。それなのに、売る物が届かなくなった。
この特集では、「なぜ、よその会社が攻撃されると自分の店が止まるのか」を、できるだけ簡単な言葉でほどいていきます。そのうえで、同じ状況に置かれながら、納品を1日も落とさなかった会社が実際にいたという話をします。その会社がやっていたことは、そのまま真似できます。
読み終わる頃には、あなたの店の「ここが止まったら終わり」という急所が、はっきり見えているはずです。
何が起きたのか——9日間の時系列
まず、事実を順番に並べます。
- 7月13日 ニチレイが不正アクセスによるシステム障害を公表。ニチレイロジグループの冷蔵倉庫の入出庫業務と、ニチレイフーズの冷凍食品の出荷業務が止まる。被害の拡大を防ぐため、グループ内のシステムを自ら遮断した
- 7月13日以降 KFCで欠品・メニュー制限・営業時間の短縮が発生。オンライン注文、モバイルオーダー、デリバリーも一時停止
- 7月15日 イオン、くら寿司、ヨークベニマルなどにも欠品や配送の遅れが広がる
- 7月16日 KFCが実施中だった「プラチナクーポン先取りキャンペーン」(7月8日開始・8月25日まで実施予定)を中止
- 7月17日 ニチレイが業務を順次再開。受発注を一部制限したうえでの部分稼働から始まる
- 7月22日 KFCが全店舗で通常営業を再開。「Chicken is back!」の特別クーポンを発表
- 同じ頃 ランサムウェア攻撃集団「RansomHouse」が犯行を主張。2025年10月にアスクルを攻撃したとされるのと同じ集団
個人情報については、被害を受けたサーバーの一部に個人情報が保管されていたことが確認され、ニチレイは個人情報保護委員会に報告しています(流出そのものは、現時点では未確認とされています)。
ここで一度立ち止まってほしいのは、日本KFCという、外食の中でも指折りの規模とオペレーション力を持つ会社が、通常営業に戻るまで9日かかったという事実です。資金力も、人材も、システムへの投資額も、個人店とは比べ物になりません。それでも止まりました。
規模は、この種のリスクに対して何の保険にもならなかったということです。
なぜ「冷凍食品の会社」が止まると、店の営業まで止まるのか
冷蔵倉庫は、ただの「冷たい部屋」ではありません。
いまの物流倉庫は、どの棚のどの箱を、どのトラックに、何時に積むのか——そのすべてをシステムが指示して動いています。だからシステムが止まった倉庫は、物が入っているのに出せない倉庫になります。
鍵をなくした金庫と同じです。中身は無事。でも、取り出せない。
そしてニチレイは、国内最大規模の冷凍・冷蔵物流網を持っています。外食チェーンも、スーパーも、学校給食も、みんなが同じ倉庫と同じシステムにぶら下がっていました。1か所が止まれば、ぶら下がっていた全員が同時に止まる。この「1か所」のことを、専門用語では単一障害点(たんいつしょうがいてん)と呼びます。
ここが、今回いちばん大事なところです。
あなたが選んだ取引先の、そのまた先にいる会社を、あなたは選んでいません。
KFCが契約したのはニチレイです。でも、ニチレイが使っているシステムがどれだけ守られているかを、KFCが選んだわけではない。あなたが食材屋さんと契約したとき、その食材屋さんが使っている倉庫まで見に行った——という人は、まずいないはずです。
仕入れ先を1社決めるという行為は、その先に続く長い鎖を、見ないまま丸ごと引き受けるという行為でもありました。今回の事件は、それを全国の店に同時に突きつけたことになります。
危機を回避した会社が、実際にいた
ここからが本題です。
同じ時期に、同じニチレイの出荷停止に直面しながら、納品を1日も落とさなかった会社があります。新潟市東区の、給食食材の卸売業者です。
取引先メーカーの一部商品は、たしかに出荷停止になりました。それでも学校への納入は滞らなかった。理由は、拍子抜けするほど単純です。
複数のメーカーと取引を分散していたからでした。
ただし、この「分散」という言葉には、致命的な落とし穴があります。ここを勘違いしたまま真似すると、いざという日にまったく効きません——
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出典:FOOD FUN!(外食産業新聞社) https://foodfun.jp/archives/138642 /ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2607/22/news064.html /オリコンニュース https://www.oricon.co.jp/news/2469254/photo/2/ /Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/d21455ce7abcbb94a313b95648a287f4a82fb027
この続きは6章・約3,600字。「分散」の落とし穴から、明日からできる具体策までを書いています。
- 「電話番号を知っているだけの相手」は、分散にならない
- 「うちみたいな小さい店は狙われない」が、もう通用しない理由
- 最先端の防御AIは、あなたの店には来ない
- 店を「止めない」5つの設計
- それでも止まった日の、3つの手順
- 次に詰まるのは、どの管か