この1か月、すし業態では「低価格の販促強化」と「高付加価値路線への拡張」が同時に進んだ。かっぱ寿司やゆず庵は夏の集客施策としてキャンペーンを連発し、くら寿司は高価格帯「無添蔵」を新宿に出店、客単価2500〜3000円という新たな価格帯を切り開いている。一方で町の寿司店は職人不足とインバウンド依存という二重の課題を抱え、倒産件数が再び増加傾向にある。銚子丸のように増収増益を実現する企業もあれば、物流障害で欠品リスクに晒された企業もあった。この特集では、大手の販促・業態戦略と、町場が直面する人材・供給網のリスクを横断的に整理し、自店の立ち位置を考えるための視点を提示する。
なぜ今、大手すしチェーンは「安さ」と「高級」の両方に舵を切っているのか
くら寿司が展開する高価格帯業態「無添蔵」は、新宿に国内6店舗目を出店し、客単価2,500〜3,000円という回転すしの通常価格帯(1,000〜1,500円程度)の倍近い水準を想定している。メリハリ消費(日常は節約し、特別な場面には惜しまず支出する消費行動)の広がりを踏まえ、低価格の集客力を持つ既存業態とは別に、付加価値型のサブブランドを育てる動きが目立つ。一方でかっぱ寿司やゆず庵は、夏場の来店動機づくりとしてセット割引やSNS連動キャンペーンを連発し、既存業態の中で客単価と来店頻度を積み上げようとしている。同じ「すし」でも、価格軸の設計次第で戦い方が大きく分かれている点は、自店の価格帯戦略を見直す材料になる。