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すし業態の経営動向まとめ

業態別/すし
最終更新:2026年7月28日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年7月時点で、すし業態は「大手回転寿司の攻勢」と「町場すし店の苦境」がはっきり分かれています。ただし大手も無条件に好調というわけではなく、増収と増益が必ずしも一致しない局面や、SNS拡散を巡るリスク対応も同時に表面化しています。

銚子丸は2027年2月期第1四半期で売上高10.8%増・営業利益5割増と、増収がコスト増を上回って吸収する形になりました。スシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIESは海外300店舗に到達し、今秋には米国初出店も予定しています。くら寿司も2027年をめどにタイ・バンコクへ出店すると発表し、東南アジア初進出に踏み出しました。訪日客が年間120万人超と多いタイを選んだのは、インバウンド需要を海外店舗誘致に転用する発想といえます。

一方でくら寿司の国内事業は、2026年10月期中間決算で売上高が前年同期比6.5%増と伸びたにもかかわらず、営業利益は同14.7%減、純利益も6.1%減という「増収減益」の形になりました。高価格帯の「無添蔵」を新宿に国内6店舗目として出店し、将来100店舗構想を進める投資フェーズにある一方、原価・人件費の上昇圧力が本業の利益を圧迫していることがうかがえます。加えて同社は2026年7月27日、店舗内での迷惑行為とされる動画がSNS上で拡散した件について「5年以上前に発生し、すでに対処・解決済みの過去の事案」と公式Xで声明を発表しました。過去にも同種の動画拡散と謝罪対応が繰り返されており、事実関係が古くても映像自体が独り歩きして再燃するリスクの根深さを示しています。

スシローも原価・物流費の高騰を理由に、2026年7月22日から定番メニューの約1割を20〜30円値上げしました。人気商品を据え置きつつ一部だけ上げる手法をとる一方、食べログとの提携企画やメ〜テレの朝番組とのコラボなど話題性のある商品開発を連発しています。銚子丸も2026年7月24日から、地元・銚子市の醸造元と組んだクラフトビール「銚子エール」を全92店舗で導入し、地域産品と連携した付加価値づくりを進めています。

キャッシュレス決済との連携も集客・販促の定番手法として広がっています。「和食さと」「にぎり長次郎」などを展開するSRSホールディングスは2026年7月27日から8月9日まで、PayPayクーポンで税込2,000円以上の決済に対し最大3%のポイントを還元するキャンペーンを実施しました。まとめ買いや複数人利用を促す価格設定が特徴です。

町の寿司店では倒産が再び増加傾向にあります。職人確保の難しさとインバウンド需要への依存という二重の課題が、地域密着型の経営基盤を揺るがしています。そんな中、通常は競合関係にあるグルメ回転寿司6社(5グループ)が、中国の水産物輸入禁止で行き場を失った国産ホタテを支援する「プロジェクトH」を発足させ、共同企画メニューを全国209店舗で販売するという珍しい動きも見られました。ロイヤルホストの公式ファンブックが重版7万部超えのヒットとなるなど、割引特典を「グッズ化」して長期の来店動機に変える集客・販促手法も広がっており、すし業態でも銚子丸が同様のファンブック展開に加わっています。加えて愛知・岐阜・三重の地域密着の回転寿司店では、夏の行楽需要を見込んだ季節限定ネタやファミリー向けサイドメニューの投入が相次いでおり、大手の価格・鮮度競争とは別軸で家族客の争奪戦が起きています。

構造・原理

すし業態は他業態に比べて「職人の技術依存度」が高いという特徴があります。この特性が、いま業界の二極化を生む構造的な要因になっています。

大手チェーンは資本力を使って商品開発・販促・人材育成を仕組み化できます。スシローは社内にスイーツ専門部門を持ち、月1回のプレゼンから新作を選抜する体制で商品開発を継続的な仕掛けとして運用しています。銚子丸のクラフトビール導入のように、地域の醸造元・生産者と組んで専門性の高い商品をチェーン全店に横展開する動きも、資本と店舗網を持つ大手ならではの型です。アトムは社内「寿司アカデミー」を開設し、育成人材を廉価版とプレミアム系の店に振り分ける構想を示しました。

ただしくら寿司の増収減益が示すように、規模があっても「売上が伸びれば利益も伸びる」とは限りません。原材料費や人件費の上昇、無添蔵のような新業態への先行投資が重なると、増収でも本業の営業利益が二桁で落ち込むことがあります。スシローが1年ぶりに一部値上げに踏み切ったことも、原価上昇圧力が業界最大手ですら一巡していないことを示す動きです。

加えて大手チェーンには「デジタル時代特有のリスク」も存在します。不特定多数の客が食品に接触しやすい回転寿司の業態では、迷惑行為動画が一度拡散すると事実関係が過去のものであっても何度も掘り返され、そのたびに現場が説明対応に追われます。くら寿司が繰り返し声明を発表してきた経緯は、SNS炎上が単発の事件ではなく継続的な信用管理課題であることを示しています。

対照的に、個人経営の町場すし店は職人一人ひとりへの依存度が高く、人材が流動化すれば経営が直接揺らぎます。人手・賃金の逼迫がすし業態では特に鋭く効く構図です。加えてインバウンド需要が一部店舗に集中し、地元客中心の店との間で経営環境の差が広がっています。地域密着の有名店が季節限定メニューで家族客を取り込もうとする動きは、大手の全国規模の値付け・供給網競争とは異なる「地元での指名理由づくり」の勝負であることを示しています。

また物流面のリスクも見えてきました。物流大手のシステム障害により冷蔵倉庫・冷凍食品の出荷業務が停止した一件は、くら寿司を含む大手チェーンでも一部店舗が品切れや臨時休業に見舞われる事態を招きました。ゼンショーHDが西日本に自前の食品工場を新設し供給網の内製化と災害リスク分散を進めるのは、こうした「見えない前提」への依存リスクに対する大手なりの回答といえます。単一の供給元・物流網、あるいは単一のSNS動画に経営が振り回される脆さは、補助金・資金繰り同様、規模を問わず共通の課題です。

経営の打ち手

町場すし店にとっては、まず職人育成を内製化するか、近隣同業者との共同育成・外部研修機関の活用など「教育を自前で抱えない」発想への転換が採用競争力を左右します。自店の職人の年齢構成と後継者の見通し、職人一人が抜けた場合の代替提供体制を、まず確認しておくべきです。

インバウンドに頼らず地域の常連客との関係を強化する集客・販促に力を入れる選択も有効です。ロイヤルホストの公式ファンブックのように、割引特典を「まとめ買いしたくなる企画」に仕立てる発想は個店でも応用できますし、SRSグループのようなキャッシュレス決済のポイント還元キャンペーンに参加して客単価アップを検証する道もあります。銚子丸のクラフトビール導入のように、地域の醸造所やメーカーと組んでオリジナルドリンクを開発する道もありますし、いきなり全店導入を目指すのではなく一部店舗での先行テストから反応を見る進め方も参考になります。東海地方の地域密着店のように、夏場の行楽需要に合わせた季節限定ネタやファミリー向けセットで固定客の満足度と来店頻度を両立させる方法も、観光地でなくても取り入れやすい打ち手です。

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