いま何が起きているか
2026年10月26日時点で、回転寿司大手の実力差はさらに鮮明になっています。すし銚子丸の27年2月期第2四半期決算は売上高が前年同期比8.5%増の126億200万円、営業利益が31.5%増の12億9700万円となり、9月の通期業績予想上方修正に続き、上期だけで年間利益目標の7割を達成しました。大トロ1貫540円など低価格競争とは一線を画す価格設定に加え、テレビCMと店頭での鮮魚解体ライブパフォーマンスが客数増に寄与したとされ、2026年9月には自由が丘に新業態店舗も出店しています。
スシローは地域密着とコラボ施策を同時並行で展開しています。岡山・香川のRSK山陽放送「金曜ライブ いまドキッ!」と初タッグを組み郷土色のある商品を共同開発するほか、国産ほたてを「そのまま・マヨ炙り・柚子のせ」の3種仕立てで一皿110円から販売するなど、同一食材の調理バリエーションで客単価と話題性を両立させる動きが続いています。くら寿司はVTuber事務所「にじさんじ」とのコラボを10月30日から開始し、来店特典のグッズでファン層の来店を促す施策に出ています。
話題化という点では、山陰発の回転寿司「すし弁慶」が、総フォロワー1100万人超のインフルエンサー・リュウジ氏の「全国で一番うまい」という投稿をきっかけに全国区の注目を集めました。広告費をかけずとも商品力がSNSで評価されれば一気に拡散する事例として注目されています。小僧寿しは創業62周年を記念し、20貫980円など複数セールとくじ付きキャンペーンを14日間連続で展開し、既存客の来店頻度向上を狙っています。
出店・業態面では、サイプレス・ホールディングスが福島県伊達市の「イオンモール伊達」に回転寿司「ABURI百貫」を含む5ブランドを同時出店し、東北初進出となる「ABURI百貫」のほか新業態「天丼専門店 ゑるびす」1号店も投入します。エキュート大宮では惣菜・ベーカリーゾーンがリニューアルされ、ミシュラン星付きブランドの新業態「立鮨 銀座おのでら」を含む9店舗が集結しました。コロワイドグループの「にぎりの徳兵衛」「海鮮アトム」はインバウンド需要に対応したメニュー大幅刷新に着手しています。ゆず庵は「本ずわいがに握り」43万食限定の食べ放題追加など冬の高単価食材メニューを投入し、スシローも秋限定パフェを発売するなど、季節訴求も各社で続いています。
構造・原理
銚子丸の増収増益とスシロー・はま寿司の好調が示すのは、客単価を上げるだけでなく客数そのものを維持・伸長できるかが利益の分かれ目になるという構造です。銚子丸のテレビCMと鮮魚解体ライブの組み合わせは、広告投資と「見せる」店頭演出を両立させた点が客数増に寄与しています。
スシローのほたて3種仕立てのように、同一食材を複数の調理バリエーションで展開する手法は、仕入れ力のある大手ならではの「少ない食材で商品数を増やす」戦略です。原価を増やさずに客単価と話題性を同時に高める発想として、個店にも応用可能な構造があります。
すし弁慶の事例は、地方の中小チェーンでも商品力そのものが評価されればインフルエンサーの自発的な発信によって全国区の話題になり得ることを示しています。広告費をかけた大手のコラボ施策とは対照的に、口コミの偶発的な拡散が集客を左右する構造も並存しています。
大型商業施設への複数ブランド同時出店は、集客力のあるモールに売場を確保しつつ新業態を小さく試すリスク分散の手法です。駅ナカ・モールという人流の安定した立地では、ミシュラン星付きブランドのような話題性のある新業態展開が仕掛けやすく、周辺の個人店との客層の奪い合いではなく住み分けを意識する必要があります。食べ放題・飲み放題ビジネスモデルの観点では、冬の高単価食材を数量限定の食べ放題に組み込む手法が原価管理と訴求力の両立策として定着しつつあります。
経営の打ち手
銚子丸の事例は、値上げ時には客数の推移を同じ頻度で確認し、単価上昇が客離れで相殺されていないかを月次で検証する重要性を改めて示しています。広告投資が難しい個店でも、店頭での調理ライブ感や実演販売的な要素、SNSでの発信を組み合わせることで低コストに同様の効果を狙う道があります。
スシローのほたて3種仕立てのように、主力食材を複数の味付け・調理法で展開しメニューの幅を広げる棚卸しは、値上げ・原価を点検する際に有効です。低価格帯の看板商品を残しつつ、炙りや薬味使いなど付加価値を付けた商品で単価を補う構成が参考になります。















