外食の軽減税率格差とは
2019年の消費税率引き上げ時、日本は「食料品は8%(軽減税率)、外食は10%(標準税率)」という区分を導入しました。テイクアウトや持ち帰りは軽減税率、店内で飲食する「外食」はサービス提供とみなされ標準税率という線引きです。
2025年8月時点で、この構造がさらに大きく動こうとしています。政府は臨時閣議で、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、現行8%から1%へ引き下げる方針を決定しました。残る1%分は中低所得者向け給付と組み合わせ「実質ゼロ化」を狙うとされ、1989年の消費税導入以来初の減税となる見通しです。一方で外食・酒類は10%のまま据え置かれる公算が大きいと報じられています。
この結果、食料品・中食と外食の税率差は現行の2%から最大9%へと拡大します。テイクアウトやデリバリーは軽減税率の枠内として1%が適用される可能性がある一方、店内飲食は変わらず10%という構図です。
構造・原理
この格差が生まれる根本は「外食=サービス提供」という税制上の区分にあります。同じ食材を使っていても、店内で調理・提供され、接客や空間という付加価値が伴うものは標準税率、持ち帰りやスーパーの惣菜は軽減税率という制度設計です。
税率差が広がるほど、消費者にとって「家で食べる(内食)」「買って帰る(中食)」の相対的なコストメリットが増します。ロイヤルホールディングスの社長も、この税率差によって内食・中食が需要を「受ける」可能性を懸念し、テイクアウトメニューや店頭販売の強化を打ち出しています。中食との競合構造は、値上げ・原価の議論とも密接に絡みます。
もっとも、減税対象となる弁当店側からも「原材料費や人件費の上昇で値下げできない」との声が出ており、消費者が期待するほどの価格低下が実現しない可能性も指摘されています。制度上の税率差と、実際の店頭価格の変化は必ずしも一致しません。
一方で、消費者調査からは異なる示唆も出ています。ホットペッパーグルメ外食総研の2026年6月調査(首都圏・関西圏・東海圏、20〜69歳)では、食料品・中食の軽減税率が0%またはそれに近くなった場合でも、外食費を「今まで通り」続ける意向が76.0%に上り、「頻度を下げる・節約する」は17.2%にとどまりました。減税で浮いたお金の使い道も「貯蓄」14.7%、「食費以外の消費」14.3%と、外食から他分野へ流れる比率は限定的です。税率差が即座に外食離れへ直結するとは限らない、という見方もできます。
経営の打ち手
税率差の拡大は構造として避けられませんが、経営判断の余地は複数あります。
- テイクアウト・デリバリー部門を新設・強化し、軽減税率のメリットを自店の売上に取り込む