フクタンの経営ノート
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外食の値上げ・原価高騰はどこまで続くのか

テーマ別/値上げ・原価
最終更新:2026年10月26日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年10月時点で、食品値上げは判明分で年間2万187品目に達し2年連続で2万品目台となりました。9月の消費者物価指数は全国ベースで前年同月比2.1%上昇、東京23区(生鮮食品除く)では2.7%上昇し、弁当が28.1%、コーヒー豆が25.4%、国産牛肉が14.2%とそれぞれ大幅に上昇しています。食料品に加え水道料金など公共料金の値上げも波及し、原価だけでなく固定費側からも収益を圧迫しています。

牛丼大手では松屋が10月13日から牛めし並盛を460円から480円へ値上げし、すき家の480円に並びました。吉野家の並盛は498円で、主要3社の価格は460〜500円圏に収れんしています。ただし2026年9月の既存店売上高は吉野家が前年同月比10.1%増、すき家が8.4%増と好調だった一方、松屋は客数自体は前年を上回りながらも0.6%減となり、同じ価格帯・同じ値上げ局面でも明暗が分かれました。

サイゼリヤは10月29日付でメニュー全般を平均6%値上げすると発表しました。税込300円の「ミラノ風ドリア」は320円に、400円メニューは420〜430円に改定される一方、ワインは100円据え置き、ビールは390円へ値下げするなど一部品目は逆に価格を下げる配慮も見せています。約6年ぶりとなるこの値上げは、2026年8月期こそ売上高3014億円(前期比17.4%増)・営業利益164億円(同5.9%増)と好調でしたが、単体の売上総利益は計画を2.1%下回り、営業利益は計画比25.8%減となっており、オーストラリア産牛肉の価格高騰(円安による購買力低下と米国産牛肉の供給減による需要シフトが要因)が背景にあります。「当社の努力不足」とする謝罪姿勢がかえってSNSで称賛を集め株価も上昇するという異例の受け止められ方をしました。桜美林大学准教授の西山守氏は、値上げ発信には社会に流れる空気を読む力が企業に求められると指摘しています。

一方でコメは真逆の動きを見せています。農林水産省によると2026年産米の9月相対取引価格は玄米60キロあたり2万1293円で前年同月比42%下落し、精米5キロの全国スーパー平均価格は10月5〜11日時点で2837円と9週連続で値下がりしました。2025年初めの4400円台から半年余りで1500円以上下がったことになります。これを受けテンアライドは「てんぐ大ホール」「湊や磯吉食堂」計72店舗で「ご飯大盛り無料」サービスを再開し、日高屋は690円の濃厚豚骨醤油ラーメンを投入して“節約外食”需要を狙う戦略を打ち出しました。

コメとは対照的に、長雨・日照不足の影響で葉物野菜の高騰が続いています。レタスは平年の約2倍、白菜は約7割高(1玉千円を超える事例も)となり、福岡市内の青果店ではキャベツが298円、白菜が398円といった高値が付いています。大手外食チェーンではメニュー変更が相次ぎ、カット野菜の値上げも予定されています。秋の味覚サンマも不漁で、大戸屋は「生さんまの炭火焼き」(1450円)の提供店舗を全体約6割にあたる約200店に制限、牛肉・卵の高騰も続き、すき焼き店では値上げ検討の声が上がっています。長年「物価の優等生」とされてきたもやしも、ある中華料理店では仕入れ値が1袋19円から1カ月で25円、直近は30円まで上昇するなど値上げの波が及んでいます。

食材卸のデリカフーズホールディングスは2027年3月期の純利益予想を13億円に下方修正しており、サプライチェーンの川上でも影響が広がっています。モヤシでは薄利多売の商習慣と燃料費高騰を背景に生産者の廃業・倒産が増加し、埼玉のサイキ食品が破産するなど、安価な食材の供給基盤自体が揺らいでいます。

富士経済は2026年10月14日、内食・外食・中食の国内食品市場が合計108兆4700億円規模になるとの調査を発表し、値上げによる消費行動の変化や2027年4月に食料品消費税率が1%・2年間適用された場合の市場影響も分析しています。消費税を巡っては政府が税制改正大綱を閣議決定し、外食の店内飲食は10%据え置きのため税率差は最大9%に拡大する見通しです。詳しくは外食の軽減税率格差で扱っています。

構造・原理

値上げの背景には原材料費・エネルギー・人件費・不動産・配送・包材コストが同時に上昇し続ける事情があります。しかし「値上げ=増益」という図式はもはや成立しません。あみやき亭は26年4〜9月期の売上高が前年同期比10%増だったにもかかわらず、牛肉価格の高騰で純利益は33%減少し、通期予想も16%減益へ下方修正されました。壱番屋(ココイチ)も客単価を2022年3月期の983円から2026年3〜8月期には1200円台まで引き上げてきましたが、客数は第1四半期0.5%増から第2四半期0.5%減に転じ、既存店売上高の伸び率は想定の2.9%増に対し実績2.4%増にとどまり、営業利益率も前期の8.1%から7.2%へ低下しています。餃子居酒屋「ダンダダン」も2026年9月度まで既存店客数が2カ月連続で前年割れとなり、客単価上昇が客数減をカバーしきれない「増収減客」の危うさが業態を問わず広がっています。

一方で、値上げと客単価戦略が利益にしっかり結びついている大手チェーンも目立ちます。リンガーハットは値上げ効果で営業利益が前年同期比約4割増となり増配も実施、ドトール・日レスホールディングスは高単価商品投入とキャッシュレス施策の組み合わせで中間期営業利益が38.1%増となりました。ステーキ店チェーンのブロンコビリーも、4月実施のサラダバーリニューアルに伴う値上げで2026年1〜9月期の純利益が前年同期比44%増、既存店売上高も8%伸びています。各社に共通するのは、単純な値上げだけでなく高付加価値メニューや設備リニューアル、販促施策とセットで客単価を引き上げている点です。ただしコメダホールディングスのように、中間決算は増収増益でも値上げ後の加盟店向け卸売上の伸びは鈍化しており、増収増益の裏で「量」の成長が課題になりやすい構造も見えます。

ホットペッパーグルメ外食総研の調査では、1,000円を超えても抵抗がないメニューの1位が海鮮丼58.3%、2位がとんかつ37.7%、3位が天丼31.0%だった一方、ハンバーガーは前回調査比9.6ポイント減、牛丼は6.8ポイント減と、大衆食への価格受容度はむしろ低下しています。素材価値や調理の手間が見える料理ほど値上げを受け入れられやすく、日常的で手軽な大衆食ほど価格の上限に敏感に反応される構造が数字で裏付けられました。

東京商工リサーチによると、弁当店の倒産件数は2025年の89件に対し2026年は8月末時点で既に83件に達し、過去最多を更新する見通しです。材料費・光熱費・人件費の高騰がそのまま原価を押し上げる薄利多売業態ほど、価格転嫁だけでは生き残れない厳しさが数字に表れています。

経営の打ち手

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