特定技能制度(外食業)とは
特定技能は2019年に始まった在留資格制度で、人手不足が深刻な分野に限り一定の技能水準を持つ外国人材の就労を認めるものです。外食業も対象分野の一つで、日本人採用が難しい店舗の戦力として広がってきました。
外食業分野は在留者数の上限が約5万人に設定されています。想定を上回るペースで上限に到達したため、政府は2026年4月13日から新規の在留資格認定証明書交付を一時停止しました。2019年の制度開始以来、外食業分野で初めての新規受入停止です。
重要なのは、停止の対象が「新規に海外から呼び込むルート」である点です。すでに就労中の人材の更新や転職は継続でき、上位資格である特定技能2号への移行も従来通り可能です。2026年10月時点でも外食業分野全体の再開見通しは立っておらず、国内にいる既存人材をめぐる争奪戦と、2号移行支援が制度対応の焦点になっています。
さらに2025年10月には、外国人が飲食店経営のために取得する在留資格「経営・管理」の許可基準も改正され、資本金等の要件が500万円以上から3000万円以上へ引き上げられました。外食業の人材確保だけでなく、外国人による店舗経営そのものの継続条件も厳しくなっている点に注意が必要です。
飲食経営にどう関係するか
人手不足・賃金が続くなか、特定技能は日本人・留学生アルバイトでは補いきれない人手を確保する手段として使われてきました。新規受入停止は、外国人材の採用計画に依存していた店舗や大手チェーンにとって、採用計画そのものの見直しを迫る出来事です。大手チェーンでも利益減が報じられ、外国人材確保の難化が業績に直結し始めていることがうかがえます。
2026年1月〜6月の外食業倒産件数は473件で、前年同期を上回り過去最多を更新しています(2026年8月19日時点)。慢性的な人手不足と人件費高騰が主因ですが、そこに新規受入停止が重なったことで、外国人労働力に依存してきた店舗の人繰りはさらに苦しくなっています。
停止から半年が経過した2026年10月時点の民間調査では、新たな構造変化が明らかになっています。在留外国人向けの求人数は停止前の2.8倍に増え、獲得競争が激化しました。さらに7月に内定した外食業の特定技能外国人のうち、東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・愛知の6都府県へ地方から転職した割合は46.4%にのぼり、3月の31.9%から大幅に上昇しています。高賃金志向に加え、地方では特定技能2号取得の機会が乏しいことも転職理由に挙げられており、地方店舗ほど人材流出のリスクが高まる構図が浮かんでいます。
こうした逼迫を受け、政府は限定的な緩和策も進めています。病院・福祉施設・学校給食の調理業務について、特定技能の分類を「外食業分野」から「飲食料品製造業分野」へ移し、2026年4月から受け入れを再開する方針です。給食業務は接客が少なく調理中心という特性があり、飲食料品製造業分野(上限13万3500人、2026年7月末時点で充足率76%)には余力があるための措置です。ただしこれは給食という限定業務の“分野移し”による対応であり、一般の外食店が直面する外食業分野そのものの上限逼迫は解消されていません。給食受託事業者はこの再開を待つ選択肢がありますが、一般店舗は国内人材確保や省人化投資で当面を凌ぐ必要があります。
もう一つの焦点が、外国人自身が経営する飲食店です。全国に約4000〜5000店あるとされるインド・ネパール料理店の多くはネパール人経営者が切り盛りしてきました。「経営・管理」ビザの資本金要件が3000万円以上へ引き上げられたことで、既存店の事業継続自体が揺らぐ事例が出てきています。こうした店舗は経営者側の資金要件強化と、特定技能1号停止によるスタッフ確保難の両方に同時に直面する構造です。
一方で、既に在留している1号人材にとっては、2号への移行がキャリアの分かれ道になります。2号は在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も可能になるため、店舗側が移行を後押しできれば長期定着につながります。逆に支援が手薄だと、他店への転職や都市部への流出という形で戦力を失うリスクがあります。居酒屋や大衆食堂・レストラン、ファストフード、焼肉、カレー・エスニックなど、シフト現場を外国人材に頼る業態ほど影響が大きくなります。
経営の打ち手
- 既に在留する1号人材の在留期限とキャリア意向を早めに整理し、2号移行の対象者を洗い出す
- 地方店舗は特に、賃金水準の見直しと特定技能2号取得支援をセットで提示し、都市部への流出を防ぐキャリアパスを明示する





