いま何が起きているか
2026年9月時点、松屋フーズ・モスフード・ホットランドなど大手ファストフード各社の決算で「増収減益」が相次いでいます。松屋フーズの2026年4〜6月期は売上高が前年比17%増の506億円となった一方、営業利益は同28%減。純利益は固定資産売却益で27%増となり、営業利益と純利益の方向が逆転しました。
一方でゼンショーホールディングスの2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は売上高・営業利益・経常利益・純利益がいずれも2ケタ増の大幅増収増益で、純利益は前年同期比89.2%増でした。注目すべきは、従来の主力だった「すき家」ではなく「はま寿司」が売上・利益の両面で首位となり、稼ぎ頭が回転すし業態に移った点です。業態間の客単価・原価構造の力学が同一グループ内でも大きく異なることを示しています。
フードリンクニュースの分析では、3月決算の外食大手42社の27.3期1Q決算のうち12社が営業損失、全体の約4割が赤字となりました。カテゴリートップ企業と他社との業績格差が「追撃困難なほど」に広がっており、稼ぎ頭が一握りの企業に集中する構図が鮮明です。
価格帯戦略では、松屋PREMIUM銀座店(神戸牛の牛めしを通常店の約3倍にあたる1390円で提供)やくら寿司「無添蔵」など上位業態の拡大と、くら寿司の一部商品最低価格の115円→110円への値下げ、ローソンの手巻おにぎり値下げが同時進行する「K字型」再編が進んでいます。体力のある一部大手はあえて値下げ・低価格訴求(マクドナルドの「セット500」CM等)で消費者心理の変化を捉えにいっています。
季節限定メニューの投入も各社で活発です。すき家は「月見すきやき牛丼」(並盛780円)を2026年9月8日より発売、モスカフェはミツカンの果実系飲料「フルーティス ざくろ」を使った秋限定ドリンクを9月9日から11月上旬まで販売するなど、食品メーカーとの共同企画による季節訴求が定着しつつあります。なか卯の「ウニ丼」(並盛1780円)、マクドナルドの夜マック限定「チーズチーズ倍月見」(単品670円)など、丼チェーンやハンバーガーチェーンでも高単価の限定メニューが客単価アップの共通手段になっています。
中食領域への進出も広がっています。松屋は家庭用おかず・おつまみのテイクアウト惣菜シリーズ「MATSUYA DELI」を始動し、看板の牛皿を惣菜化して晩酌需要を取り込む狙いです。外食チェーンが店内飲食に留まらず家庭の食卓まで商圏を広げる動きは外食の中食化・店舗外収益化の一例といえます。
出店面では、資さんうどんがすかいらーくグループ「ガスト日高店」を業態転換する形で埼玉県日高市に初出店。既存ファミレス物件の居抜き転換により、新規出店より短期間・低コストでの専門業態拡大が実現しています。ココイチの深夜7%上乗せなど人手・賃金コストの価格転嫁も広がっています。
海外発チェーンの都心進出も加速しています。韓国発バーガー&チキンブランド「マムズタッチ」は2024年4月の渋谷出店から約1年半で店舗網を広げ、2026年9月には新宿パークタワー店をオープン。オフィス街のランチ需要を狙う立地型出店が続きます。
一方でコロナ禍のテイクアウト需要で急増した唐揚げ専門店は淘汰が進み、2026年9月時点で倒産件数は前年比9割減。100店舗超を維持できているのは実質3ブランドのみとなり、乱立が一巡した業態の成熟過程を示しています。
構造・原理
決算を分解すると、営業利益の増減は「増収による効果」と「利益率変化による効果」の2つに分けられます。松屋フーズ・モスフード・マクドナルド・ホットランドいずれも、増益・減益の主因が売上量の変化ではなく利益率(原価率・販管費率)の変化にあることが共通しています。増収=増益と単純に捉えず、率の変化を分けて見る発想が値上げ・原価を読む基本になります。
ゼンショーの稼ぎ頭が牛丼から回転すしに移った事実は、同一グループ内でも業態ごとの客単価・原価バランスが業績を大きく左右することを示します。大手の業態別ポートフォリオ戦略が結果として表れた一例です。
外食大手42社の4割が赤字という状況は、カテゴリートップに需要と収益力が集中し、それ以外は規模の経済やブランド力の差で追撃が難しくなっている構造を示します。1社独走型の市場では、価格競争でトップ企業に挑むより、別の軸で差別化する発想が中小・個人店には現実的です。
食品メーカーとチェーンの共同企画は、単独商品の宣伝より双方の顧客層にリーチしやすい構造的なメリットがあります。素材の話題性を借りることで開発コストを抑えつつ季節感を演出できる手法です。
既存店の業態転換による出店拡大や、看板メニューの惣菜化による中食参入は、いずれも既存の調理・仕入れ体制や物件を活かしつつ販路・商圏を広げる手法として共通しています。
経営の打ち手
- 売上が伸びているときも「増収効果」と「利益率変化効果」を分けて確認する。原価率と販管費率のどちらが動いているかを毎月点検する習慣を持つ
- カテゴリートップと同じ土俵で価格競争するのではなく、体験価値や専門性、地域密着といった別軸での差別化を検討する