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ファストフード業態の値上げ・利益構造と価格帯再編の最新動向

業態別/ファストフード
最終更新:2026年9月11日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年9月時点、松屋フーズ・モスフード・ホットランドなど大手ファストフード各社の決算で「増収減益」が相次いでいます。松屋フーズの2026年4〜6月期は売上高が前年比17%増の506億円となった一方、営業利益は同28%減。純利益は固定資産売却益で27%増となり、営業利益と純利益の方向が逆転しました。

こうした状況を受け、松屋は「牛丼以外」で勝負する新戦略を打ち出しています。すき家・吉野家との牛丼3強競争の中で単品業態の限界が意識される中、松屋は家庭用惣菜「MATSUYA DELI」など牛丼以外の商圏開拓に動いており、単品特化からの多角化という業界共通の課題を象徴する動きです。

一方でゼンショーホールディングスの2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は売上高・営業利益・経常利益・純利益がいずれも2ケタ増の大幅増収増益で、純利益は前年同期比89.2%増でした。注目すべきは、従来の主力だった「すき家」ではなく「はま寿司」が売上・利益の両面で首位となり、稼ぎ頭が回転すし業態に移った点です。業態間の客単価・原価構造の力学が同一グループ内でも大きく異なることを示しています。

フードリンクニュースの分析では、3月決算の外食大手42社の27.3期1Q決算のうち12社が営業損失、全体の約4割が赤字となりました。カテゴリートップ企業と他社との業績格差が「追撃困難なほど」に広がっており、稼ぎ頭が一握りの企業に集中する構図が鮮明です。

そうした中、マクドナルドの2026年8月の既存店売上高は前年同月比3.5%増となり、既存店客数1.3%増・既存店客単価2.2%増と、いずれも前年を上回りました。7月(売上高5.1%増、客数0.3%増)と比較すると客数の伸びはやや拡大した一方、売上高の伸び率自体は縮小しており、客単価上昇が業績を下支えする構図が続いています。8月末時点の店舗数は3043店舗です。

価格帯戦略では、松屋PREMIUM銀座店(神戸牛の牛めしを通常店の約3倍にあたる1390円で提供)やくら寿司「無添蔵」など上位業態の拡大と、くら寿司の一部商品最低価格の115円→110円への値下げ、ローソンの手巻おにぎり値下げが同時進行する「K字型」再編が進んでいます。体力のある一部大手はあえて値下げ・低価格訴求(マクドナルドの「セット500」CM等)で消費者心理の変化を捉えにいっています。

季節限定メニューの投入も各社で活発です。すき家は「月見すきやき牛丼」(並盛780円)を2026年9月8日より発売したほか、テイクアウト特化ブランド「SUKICAFE」でも焼き芋シェイクを追加し、マスカット・抹茶・バニラと並ぶラインナップとしました。取扱いは全国1822店舗(2026年9月8日時点)と一部店舗に絞った段階導入です。モスカフェはミツカンの果実系飲料「フルーティス ざくろ」を使った秋限定ドリンクを9月9日から11月上旬まで販売するなど、食品メーカーとの共同企画による季節訴求が定着しつつあります。

ハンバーガーチェーンでもサイドメニュー強化と中食対応の動きが見られます。ウマミバーガーはトルティーヤチップスにチリミート・アボカド・サルサ等をトッピングした「ナチョス」(780円)を新投入し、青山店・みなとみらい店ではデリバリー対応も強化しました。単品訴求に加え、シェア型サイドメニューによる客単価アップと、旗艦店からの段階的なデリバリー展開という2つの手法が組み合わさっています。

映画・アニメなど話題コンテンツとのコラボ販促も定型化しています。宅配ピザチェーン「アオキーズ・ピザ」は2026年10月公開の映画とのコラボ企画として、期間限定ピザに限定トレカを付け、SNSプレゼントキャンペーンを併催する形を取っています。話題性のあるIPと絡めて既存客の来店頻度向上と新規層獲得を同時に狙う手法は、宅配ピザ業界における集客・販促の定型パターンの一つです。

中食領域への進出も広がっています。松屋は家庭用おかず・おつまみのテイクアウト惣菜シリーズ「MATSUYA DELI」を始動し、看板の牛皿を惣菜化して晩酌需要を取り込む狙いです。外食チェーンが店内飲食に留まらず家庭の食卓まで商圏を広げる動きは外食の中食化・店舗外収益化の一例といえます。

ココイチの深夜7%上乗せなど人手・賃金コストの価格転嫁も広がっています。

構造・原理

決算を分解すると、営業利益の増減は「増収による効果」と「利益率変化による効果」の2つに分けられます。松屋フーズ・モスフード・マクドナルド・ホットランドいずれも、増益・減益の主因が売上量の変化ではなく利益率(原価率・販管費率)の変化にあることが共通しています。増収=増益と単純に捉えず、率の変化を分けて見る発想が値上げ・原価を読む基本になります。

ゼンショーの稼ぎ頭が牛丼から回転すしに移った事実は、同一グループ内でも業態ごとの客単価・原価バランスが業績を大きく左右することを示します。松屋が牛丼以外での勝ち筋を探る動きも、単品業態がトップ企業に価格・シェアで劣後した際、別軸の商品ポートフォリオを持つことの重要性を裏付けています。

外食大手42社の4割が赤字という状況は、カテゴリートップに需要と収益力が集中し、それ以外は規模の経済やブランド力の差で追撃が難しくなっている構造を示します。1社独走型の市場では、価格競争でトップ企業に挑むより、別の軸で差別化する発想が中小・個人店には現実的です。

食品メーカーやコンテンツIPとチェーンの共同企画は、単独商品の宣伝より双方の顧客層にリーチしやすい構造的なメリットがあります。話題性を借りることで開発コストを抑えつつ季節感・イベント感を演出できる手法です。すき家のシェイク展開やウマミバーガーの旗艦店限定デリバリーのように、全店一斉ではなく一部店舗から試験導入する手法も、需要や設備条件に応じたリスク分散として機能します。

既存店の業態転換による出店拡大や、看板メニューの惣菜化による中食参入、サイドメニュー追加による客単価アップは、いずれも既存の調理・仕入れ体制や物件を活かしつつ販路・商圏を広げる手法として共通しています。

経営の打ち手

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