いま何が起きているか
2026年10月時点、牛丼大手3社の価格はほぼ横並びに収れんした一方、既存店売上の明暗がはっきりと分かれています。9月度実績では、すき家が既存店売上高前年同月比8.4%増、吉野家が10.1%増と伸びたのに対し、松屋フーズは0.6%減でした。松屋は10月13日に牛めし並盛を460円から480円へ値上げしてすき家と並んだほか、10月20日には「ごろチキチリソース定食」など990円のボリューム重視の新定食を投入し、10月27日からはテイクアウト惣菜「MATSUYA DELI」13品を一斉値下げ(牛皿DELIは370円から290円)するなど、外食と中食の両面で巻き返しを図っています。
主力食材の高騰を受け、牛丼チェーンそろって豚肉・鶏肉メニューを強化している点も続いています。すき家は「ローストポーク丼」(並780円、にんにく追加850円)を投入、松屋は鉄板・丼の2スタイルで「ごろチキチリソース」を展開、吉野家は「厚切り豚角煮定食」を夜限定レギュラー化しました。
食欲の秋に合わせた増量合戦も業態を超えて同時多発しています。松のやは「倍量フェア」で唐揚げなどを価格据え置きのまま最大2倍に、カフェ・ベローチェはパスタをプラス100円で2倍盛りに、ラーメン魁力屋は焼きめしを無料で1.5倍に、ピザハットはMサイズをSサイズ価格で、ほっかほっか亭は対象弁当にチキンかつを無料付与するなど、値上げ疲れが指摘される中での「お得感」演出が各社で一斉に進んでいます。
マクドナルドは10月21日から「サイド+ドリンク390円」の午後2時以降限定メニュー「390ペア」を投入し、客足が落ちるアイドルタイムに新しい来店動機を作る施策を打ち出しました。バーガー市場ではケンタッキー「540円バーガー」、KFC鶏もも肉バーガー、マックの「チキンバーガーシリーズ」定番化、ドムドムの「麻婆なすチーズチキンバーガー」、カールスジュニアのBOXメニューなど、チキン系商品を軸にした新商品投入が相次いでいます。KFC日本法人ではP&G出身者が新CEOに就任するなど、異業種出身トップの起用も目立ちます。
サブウェイは既存店売上が72カ月連続で増加しており、川崎・横浜港北・秋葉原などで新規出店を継続。モバイルオーダーとセルフオーダーを前提にした省力化型の店舗設計が標準になりつつあります。バーガーキングも2028年末までに全国600店舗を目指し出店を続けており、2026年10月30日時点で385店舗となる見込みです。外食大手・物語コーポレーションはカルビ丼業態「焼きたてのかるび」を40店舗まで拡大し、先行する韓丼と競合する構図も生まれています。ゼンショーHDは新社長が「売上高15兆円」構想を継承する方針を示す一方、吉野家HDでは採用業務委託先への不正アクセスで個人情報5,366件が漏洩する事案も発生しました。フードデリバリー市場の再編はフードデリバリー業界再編(3強体制化)で扱っています。
構造・原理
牛丼3社が同じ価格帯に収れんしても業績が揃わないのは、値上げのタイミングと客単価を支える商品構成次第で同じコスト環境でも明暗が分かれるためです。これは値上げ・原価の典型例です。各社そろっての豚肉・鶏肉メニュー強化は、単一食材への依存リスクを分散する動きとして読めます。
食欲の秋の増量合戦は、値上げへの消費者の抵抗感が根強い中、価格を据え置いたまま満足度を底上げする代替策として広がっています。ただし量を増やす施策は原価率を圧迫するため、短期的な客数防衛と中長期の採算のバランスが課題になります。マクドナルドの「390ペア」は、値引きではなくアイドルタイムという「時間の隙間」に新しい来店動機を作る発想であり、全時間帯を収益源化しようとする業界共通のトレンドの一例です。
サブウェイの72カ月連続増収は、モバイルオーダー・セルフオーダーによる省力化と、オフィス街・住宅街が重なる複合立地やホームセンター併設など動線の良い立地選定を組み合わせた結果と見ることができます。人手・賃金が制約となる中、省人化を前提にした出店モデルは今後も広がる可能性があります。
物語コーポレーションが専門チェーンの先行する市場(カルビ丼)に業態開発力で参入する動きは、大手の業態開発力がニッチな専門業態の市場にも及ぶことを示しています。KFCやマクドナルドで見られる異業種出身トップの起用は、既存の業界慣習にとらわれないマーケティング・組織運営のノウハウを取り込む狙いがあり、大手・チェーン動向の一側面です。出店競争については出店・閉店・M&Aとも重なります。
経営の打ち手
- 値上げを実施しても客単価が下がる場合があることを前提に、値上げと同時に客単価を支える商品(定食化・増量メニューなど)をセットで設計する
- 価格を据え置いたまま主役食材を増量する、または少額の追加料金でボリュームアップを選べるオプション制にするなど、自店の原価構造に合う形で増量施策を小さく試す

















