いま何が起きているか
2026年10月26日時点で、食堂・ファミレス業態は値上げと好決算が同時進行する局面に入っています。サイゼリヤは10月29日付でメニュー全般を平均6%値上げし、「ミラノ風ドリア」は300円から320円に改定します。背景には円安によるオーストラリア産牛肉の価格高騰があり、2026年8月期はサイゼリヤ単体の売上総利益が計画を2.1%下回り、営業利益は計画比25.8%減となっていました。業界内で最も値上げを抑えてきたチェーンでさえ、効率化だけでは原価高騰を吸収できなくなっている状況です。
9月度の既存店売上高は主要ファミレス4社すべてがプラスとなりました。サイゼリヤ10.6%増、すかいらーく2.9%増、ジョイフル6.4%増、ロイヤルホスト3.2%増です。すかいらーくは客数0.7%減ながら客単価3.7%増で増収を確保し、秋フェアやアプリ会員(1660万人超)施策が下支えしました。ブロンコビリーも第3四半期累計で営業利益48.4%増と大幅増益となり、サラダバー刷新と主力ステーキ業態の好調が寄与しています。一方ですかいらーくHDは176円生ビールなど低価格メニューで節約志向の顧客をつなぎ留める戦略も同時に進めており、値上げと低価格訴求が業態内で使い分けられています。
原価面では、長雨・日照不足による葉物野菜の高騰が続き、カット野菜の値上げにも波及しています。加えてサンマ不漁により大戸屋は「生さんまの炭火焼き」の提供店舗を全体の約6割に制限するなど、天候・漁獲量に左右される生鮮食材の調達不安定さが業界共通の課題になっています。弁当店は材料費・光熱費・人件費の高騰を受け、2026年8月末時点で倒産件数が過去最多の83件に達し、昨年通年の89件に迫るペースです。単価が低く原価上昇をそのまま利益圧迫につなげやすい構造が、他の食堂業態より弁当店で顕著に表れています。
人材面では、特定技能の受け入れ上限5万人への到達で新規在留資格の申請が止まり、「客席はあるのにスタッフがいないため客を取れない」という声が出ています。学生数の減少によるアルバイト確保難も重なり、政府は給食・介護分野の区分変更を含む制度調整を進めています。
業態転換・出店も活発です。ニラックスはガスト跡地をイタリアン業態に転換したほか、新たに串揚げバイキング「くし葉」3号店を静岡に出店します。サイプレス・ホールディングスは福島の新モールに寿司・定食・とんかつ・天丼の5ブランドを同時出店し、新業態の実験を一括で行う手法を取っています。
構造・原理
食堂・ファミレスは「低価格・高回転」が前提のため、原価上昇の吸収余地が他業態より小さい構造的弱さを持ちます。サイゼリヤの値上げが称賛された背景には長年の価格維持姿勢への信頼があり、同じ値上げでも日頃の姿勢によって受け止め方が分かれます。値上げ・原価の判断力と伝え方の両方が競争力になっています。
弁当店の倒産急増は、客単価が低く値上げの余地が限られる業態ほど原価高騰の直撃を受けやすいことを示しています。仕入れルートの工夫やボリューム・話題性での差別化が、価格転嫁だけに頼らない生存策として機能しています。
野菜・サンマなど天候・漁獲に左右される食材の価格変動は年々大きくなっており、大手チェーンでさえ提供店舗を絞らざるを得ない状況です。特定食材への依存はメニュー構成の構造的弱点になります。
すかいらーくのように客単価上昇で客数減少をカバーする増収構造と、低価格メニューで客数を維持する戦略が同じグループ内で並行する点は、値上げと低価格訴求の使い分けが業態内のセグメント戦略として定着しつつあることを示します。
特定技能の上限到達は、積み上げ方式の制度設計が外食業の実需要に追いついていない構造的なミスマッチを浮き彫りにしています。特定技能制度(外食業)、人手・賃金も参照してください。
経営の打ち手
値上げを実施する際は、サイゼリヤのように一部メニューを据え置きつつ全体を小幅に改定する設計が参考になります。理由を丁寧に説明し、日頃の価格姿勢との整合性を示すことが受容度を左右します。集客・販促も参照してください。
原価急変への対応としては、メニューの使用量・構成の見直し、代替食材への切り替え、複数仕入れ先の確保が有効です。逆に値下がりした食材は顧客還元に回し、食材ごとに価格設計を使い分ける柔軟性が求められます。
















