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大衆食堂・レストランの経営戦略と価格・出店動向

業態別/大衆食堂・レストラン
最終更新:2026年9月8日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年9月9日時点で、食堂・ファミレス業態は「税制の分岐と減税実装格差」「価格の二極化(値上げ・値下げ・高価格帯進出の同時進行)」「定食チェーンの台頭」「駅直結・商業施設・フードコートへの立地転換」「省人化DXによる増益」「業態転換・M&A」「人手不足の深刻化」が同時進行しています。

食料品消費税を2027年4月から2029年度の給付付き税額控除本格導入までの「つなぎ」措置として1%に引き下げる方針が固まる一方、外食・イートインは10%据え置きが確定的です。UAゼンセンの永島智子会長は9月3日、期間限定の消費税減税について「賃上げに影響させるべきではない」と発言しました。税率差を正しく認識していた人は31.4%にとどまる一方、昼食1,000円の想定で「自炊」「惣菜・弁当」を選ぶ人が「店内飲食」を上回るとの調査結果もあります。

価格戦略は値上げ・値下げ・高価格帯進出が同時に進む局面です。ロイヤルホストは9月16日にグランドメニューを刷新し客単価6%上昇、くら寿司は最低価格を110円へ引き下げつつ一部値上げ、ジョイフルも一部値下げしました。9月1日から飲食料品全体で4500品目規模の値上げが本格化しています。一方で松屋フーズは2026年6月、百貨店の松屋銀座に高級業態「松屋PREMIUM」を出店し、神戸牛牛めしを1390円(通常店の約3倍)で提供する新客層開拓に踏み出しました。牛丼という大衆業態自体が、価格帯の上端を切り拓く動きを見せています。海外に目を向けると、英国では外食客の3分の1以上、米国では約7割が外食頻度を減らしたとの調査結果もあり、世界的な物価上昇局面での外食離れは日本にとっても他人事ではありません。

サイゼリヤは価格据え置きの「逆算経営」で7月既存店売上高が前年同月比12.6%増と好調でした。定食チェーンの好調も継続しており、大戸屋は8月既存店売上高が前年同月比10.8〜11%増(客数6.0%増・客単価4.5%増)となり、株価も3日ぶりに反発しました。値上げだけに頼らず来店動機自体を増やしている点が特徴です。やよい軒・からやま・ごちとんなど定食チェーン各社は秋冬のみそ汁や松茸を使った懐石風メニューなど季節感を強調した秋冬新メニューを一斉投入し、季節商戦が本格化しています。すかいらーくも定食市場に参入しており、競争は一段と激しくなる見込みです。ステーキ・ハンバーグ業態でも、あさくまが27年1月期第一四半期に売上高前年比25%増と好調を継続し、3年後の売上高200億円達成を目標に掲げるなど、原価高の逆風下で成長を続ける事例が出ています。ガッツリ系チェーンの「伝説のすた丼屋」も4週連続の週替わり肉丼フェアと総重量約3.5kgの完食チャレンジを展開し、ボリューム訴求とSNS話題化で来店動機を作る動きを続けています。

立地戦略では駅直結・商業施設への進出が加速しています。京成電鉄が開発した「ekubo京成 新鎌ケ谷」が9月10日にオープンし、一風堂・くら寿司・ロイヤルホストなど飲食12店舗が入居しました。鉄道会社が沿線価値向上のために飲食テナントを積極活用する動きの一例です。イオングループのオリジン東秀も9月9日、常磐線北小金駅南口徒歩1分という好立地に「れんげ食堂Toshu 北小金店」を新規開業し、定番食堂メニューにアルコール・テイクアウトを組み合わせた業態で外食・中食双方の需要取り込みを狙っています。フードコート特化業態の拡大も続いており、ジョイフルの「JOYFULL EXPRESS」は全国3店舗目をイオンモール高知に出店、コロワイドグループの「牛角焼肉食堂」も9月福岡初出店で全国93店舗に拡大しました。さらにイオンモール八千代緑が丘が9月18日にリニューアルオープンし、駅直結・人口増加エリアで飲食ゾーンを若年層からファミリー向けに刷新するなど、モール側が家族客の来館頻度を高める形で飲食テナント構成を見直す動きも出ています。ロードサイド依存からの脱却を狙う動きは、かつてサイゼリヤも試みた立地転換の再来といえます。

商品開発・販促では、ジョイフルの「鬼滅の刃」コラボ第4弾が完結編として展開、松屋・松のや・やよい軒・吉野家・なか卯の牛丼・定食大手5ブランドが9月に新メニューを一斉投入しています。愛知県では官民協議会主導の「うまみ県あいちフェア」に県内21店舗のレストラン・ホテルが参加し、味噌・しょうゆ・酢・日本酒・みりん・漬物など地域の発酵食文化を使った期間限定メニューを提供する取り組みも進んでいます。海外ではPizza ExpressやNando'sのようなロイヤリティプログラム、First TableやEatClubのようなオフピーク割引で空席時間帯の稼働率を上げる動きも広がっています。

業態転換・M&Aも進行中です。TKPはハークスレイから仕出し・ケータリング事業を買収し完全子会社化しました。すかいらーくHDは約2100店への配膳ロボット導入と卓上タブレット注文で10期ぶりの最高益更新を見込み、FOOD&LIFE COMPANIESは京樽全株式をSRSホールディングスへ売却しました。人手不足は深刻で、外食業の約9割が人材不足を実感し、4割超がスキマバイトの活用を検討しています。

構造・原理

食堂・ファミレス業態は「低価格・高回転」を前提とするため、原価上昇の吸収余地が他業態より小さい構造的弱さを持っています。9月の4500品目規模の値上げは業態を超えて波及する構造的な原価問題であり、原価が上がった食材は値上げ、下がった食材は還元というメリハリ型の価格改定が定着しつつあります。松屋PREMIUMのような高価格帯業態進出は、既存の低価格ブランドとは別枠で客単価の天井を引き上げる試みであり、値下げ・値上げの二極化に加えて「価格帯そのものを増やす」第三の選択肢が現れたことを示しています。海外の外食離れ調査は、値上げの累積が一定の閾値を超えると来店頻度そのものが落ちる構造的リスクを示唆しており、国内でもコスト高が続けば同様の現象が起こり得ます。

サイゼリヤの逆算経営や大戸屋・やよい軒・からやま・ごちとんの好調、あさくまの成長継続、伝説のすた丼屋の週替わり企画は、値上げを前提とせず「品数・栄養バランス・季節感・話題性」という相対的な割安感・独自性を再定義した結果です。大戸屋の株価反発は、既存店売上高の伸びが市場評価にも直結することを示しており、外食全体の価格上昇局面で定食・専門業態の相対的魅力が再評価されている構造を裏付けます。この市場にすかいらーくが参入したことで、既存業態と大手資本が入り混じる競争フェーズが進行しています。

駅直結・商業施設・フードコートへの出店拡大は、ロードサイド出店の適地減少という構造的制約への対応です。ekubo京成のような鉄道会社主導の複合施設に大手チェーンが集中して入居する動きや、オリジン東秀「れんげ食堂Toshu」のように資本力を背景に駅前一等地へドミナント出店する動き、牛角焼肉食堂・JOYFULL EXPRESSのように既存業態を簡易化・低価格化して商業施設に持ち込む手法、イオンモール八千代緑が丘のように施設全体の刷新に合わせて飲食ゾーンごと入れ替える手法は、いずれも集客力のある立地・施設の客動線に相乗りする発想であり、単独立地での成長限界を補う立地戦略の転換を示しています。個人店にとっては立地の資本競争で対抗するのが難しい以上、地域密着や接客の強みで差別化する必要性が一段と高まっています。

消費税1%減税をめぐる「実装格差」と「税率差の認知」は、価格戦略の意思決定力そのものが規模によって異なることを示すと同時に、客側の行動変容という逆風にもなり得ます。愛知の発酵食フェアのように官民連携で地域資源を軸に複数業態が横断的に集客企画を行う動きは、価格競争一辺倒ではない訴求軸の広がりを示しています。値上げ・原価商品開発集客・販促大手・チェーン動向出店・閉店・M&A人手・賃金も参照してください。

経営の打ち手

価格戦略では、原価が上がった品目は値上げ、下がった品目は値下げというメリハリ型の見直しが有効です。加えて、松屋PREMIUMのように既存ブランドとは別枠で高価格帯メニュー・別業態を試す道もあります。海外の外食離れ調査が示すように、値上げが続く局面ではロイヤリティプログラムで常連客に段階的な特典を用意する道、オフピーク時間帯限定の割引で空席を収益に変える道、価格はそのままにメニュー構成や量を見直す道など、複数のアプローチを客層・稼働状況に合わせて組み合わせる余地があります。

定食チェーンやあさくまのような専門業態の好調、伝説のすた丼屋の週替わり企画から学べるのは、他業態の値上げが進む局面では「コスパ感」「季節感」「話題性」「独自の経営手法」を再定義する訴求軸が有効になり得るという点です。ただし週替わり企画で原価が高い具材を使う場合は、数量限定にするなど採算とのバランスを見る道も考えられます。大戸屋・やよい軒・からやま・ごちとんの秋冬新メニュー投入のように、地域の旬食材を使った独自メニューで差別化する道もあれば、定番メニューの品質向上に注力して季節商品は最小限に絞る選択肢もあります。愛知の発酵食フェアのように、地元産の調味料や発酵食品を軸にした期間限定メニューを企画する道、同様の地域連携イベントへの参加を検討する道も有効です。

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