いま何が起きているか
2026年7月時点、夏場の客足鈍化に対応するため大手チェーンが一斉に販促を強化しています。すき家・サンマルクカフェ・DEAN&DELUCA・長崎ちゃんめん・なか卯が夏季限定の「福袋」を発売し、コメダ珈琲店は2年ぶりに「ハワイフェア」を復活させました。びっくりドンキーは7月27日から8月25日まで、公式アプリ・LINE友だち限定でポテトとイチゴミルクのLサイズをSサイズ価格で提供するキャンペーンを実施し、築地銀だこも8月5〜7日に恒例の「銀だこ祭り」で看板のたこ焼を100円引きにします。SRSホールディングスは「和食さと」「かつや」など多数のブランド横断で、7月27日から8月9日までPayPayクーポンによる最大3%還元キャンペーンを実施しており、キャッシュレス決済事業者との連携施策も定番化しつつあります。
IPコラボ・話題性型の施策も活発です。渋谷スクランブルスクエアなど大型商業施設4館が漫画「ダンジョン飯」と組んだ33店舗規模のレストランフェアを開催し、ピングー45周年を記念したコラボカフェも東京ソラマチに登場しました。夜アイス専門店「21時にアイス」は総フォロワー60万人超のグルメ系インフルエンサーとの第2弾コラボメニューを発売するなど、インフルエンサー起用による話題づくりも継続的な取り組みへと発展しています。UGCマーケティングサービス「Vimmy」も物販中心から美容サロン・飲食店など来店型店舗向けに事業を拡大し、インフルエンサーの来店・体験投稿を集客に活用する仕組みの提供を始めました。
地域連携も深化しています。岐阜県飛騨市と和食麺処サガミは3年目となる「飛騨のめぐみ」コラボフェアを名古屋市内21店舗で開催し、単なる食材調達を超えて幻の在来種「万波そば」の保全や企業による農作業支援にまで踏み込んでいます。
もう一つの潮流が業務効率化と集客の接点です。うなぎ専門店「鰻の成瀬」はAI電話受付とテイクアウト注文システムを連携させる実証実験を開始し、ピーク時間帯の取りこぼし防止に取り組んでいます。松屋フーズはマーケットプレイス「Temu」出店に続き越境ECサイト「AliExpress」にも出店し、複数のECモールへ販路を広げています。
一方で、新規客の約8割が一度の来店で離脱しているという調査結果に加え、特定店に固執しない顧客層でも約半数がプロモーション施策をきっかけに再来店した経験があるという別調査も出ており、「呼び込む」施策そのものよりも「来店後のフォロー」が離脱防止のカギになる構図が改めて浮き彫りになっています。また取引先1社のシステム障害が自社の販促を止めてしまうリスクや、SNS上で古い迷惑行為動画が再拡散し現場が対応に追われるリスクも表面化しています。帝国データバンクの調査では2026年上半期の飲食店倒産が473件と上半期として過去最多を更新し、酒場・ビヤホール業態が125件で最多となるなど、集客・販促だけでなく経営基盤そのものの厳しさも増しています。物価高と猛暑が続く夏休みには、学校給食が止まる期間の子どもの食を子ども食堂などが支える動きも各地に広がっており、外食・中食事業者と地域の関わり方も問われています。
構造・原理:なぜこれらの型が使われるのか
集客・販促の施策は大きく次の型に整理できます。
- 福袋・クーポン同梱型:すき家「SUMMER BAG」やなか卯の夏の福袋のように、購入額と同等以上の還元を見せつつ長期間有効なクーポンで再来店の口実を作る設計です。
- 期間限定値下げ・くじ型:日高屋のニラレバ炒め値下げや築地銀だこの「銀だこ祭り」のように反応が読みやすい看板商品を対象に絞る手法に加え、しゃぶ葉の「はずれなし縁日くじ」やびっくりドンキーのLサイズをSサイズ価格にする施策のように、割引そのものより「体験・お得感」でアプリ・LINE登録という接点強化を同時に狙う設計も増えています。
- キャッシュレス決済連携型:SRSグループのPayPayクーポンのように、決済事業者のポイント還元インフラに乗ることで自社の販促コストを抑えつつ客単価アップを狙う手法です。条件を「税込2,000円以上」のように設定し、まとめ買いや複数人利用を促す設計も見られます。
- 地域周遊・産地連携型:館林や総社の周遊イベント、徳島県の阿波おどり×阿波尾鶏のように単店の販促力の限界を自治体・複数店連携で補う仕組みに加え、飛騨市×サガミのように単発の物産フェアから食材調達・在来種保全まで踏み込む複数年の関係へと発展する事例も出てきました。
- 話題性・コレクション性型:サンリオの期間限定カフェやピングー45周年コラボカフェのようなIP連携、ロイヤルホストの公式ファンブックのように、割引そのものより「限定感」で購買を促す設計です。
- インフルエンサー・UGC活用型:「21時にアイス」のインフルエンサーコラボ第2弾や、来店型店舗向けにサービスを広げた「Vimmy」のように、フォロワーを持つ個人の来店・投稿を起点にSNS上での拡散を狙う手法です。単発の起用で終わらせず継続コラボでファン層を育てる動きも見られます。
- 販路拡大・チャネル横断型:松屋フーズのTemu・AliExpress出店のように、店舗商圏の外にいる顧客をEC・新興モールで取り込む動きです。
- 評判・信頼管理型:Google口コミの獲得・振り分けを支援するツール「クチコミドクター」の登場のように、口コミの数と点数そのものを集客インフラとして仕組みで管理する動きです。
これらに共通するのは「いかに来店・購買の入口を作るか」という設計ですが、人手・賃金の制約が強まる中、施策を打つほど現場の運用負荷も増える点は見落とせません。「鰻の成瀬」のAI電話受付のように、集客施策と並行して受注・対応の自動化を進める動きも、この負荷軽減の文脈で理解できます。帝国データバンクの上半期倒産件数473件という数字が示すように、外部環境が厳しい業態ほど自社で管理できる顧客接点(LINE公式アカウントなど)の整備が注目される背景にもなっています。
経営の打ち手
入口の設計
- クーポン同梱型の福袋は、グッズ制作コストをかけずに既存のドリンク券・割引券だけで簡易版として試すという道があります。