外食・食品税率差拡大問題とは
政府は2027年4月から2年間、軽減税率対象の食料品にかかる消費税率を8%からさらに1%へ引き下げる方針を閣議決定しています。1989年の消費税導入以来、初めての税率引き下げとなる措置です。
この1%への引き下げは、2029年度に本格導入が予定される「給付付き税額控除」までの「つなぎ」措置と位置づけられています。恒久的な制度ではなく、あくまで時限的な軽減策という点が特徴です。
一方、店内飲食(外食)の消費税率は10%のまま据え置かれる見通しです。この結果、食料品(弁当・惣菜など中食を含む)と外食の税率差は、現行の2%から一気に9%へ拡大する可能性があります。
ただし2026年8月24日時点で、この減税措置に関する法案はまだ成立していません。これまでの軽減税率制度でも店内飲食は8%のまま、持ち帰り・中食は8%対象という線引きがされてきた経緯があり、今回の1%措置もこの構造を踏襲し外食が対象外になる可能性が高いとみられていますが、確定事項ではなく今後の国会審議次第という位置づけです。
消費税制度上、外食は「食事サービスの提供」として扱われ、軽減税率の対象外とされています。テイクアウトや弁当店で販売される食品、デリバリーで届けられる食品は「食料品」として軽減税率の対象になるため、同じような食事でも税率が大きく異なる構図が生まれます。
飲食経営にどう関係するか
税率差の拡大は、外食と中食・内食との価格差を直接広げます。同じ予算でも、店内飲食よりテイクアウト・弁当・惣菜・デリバリーを選ぶ消費者が増えやすくなり、外食離れが懸念されています。
さらに深刻なのは、外食が相対的に「割高」に見られやすくなることで、値上げそのものがしにくくなる点です。仕入れコストや人件費が上がり続ける中、価格転嫁が難しくなれば、賃上げ原資の確保にも支障が出かねません。人手・賃金の課題と税制の問題が絡み合う構図になっています。
この構造変化は業態や規模を問わず影響します。大手チェーンでは、ロイヤルホールディングスやすかいらーくHDが早々にテイクアウトメニューや弁当強化の方針を示しました。すかいらーくHDは売上の85%以上を店内飲食に依存しているため、税率差拡大への危機感が特に強いとみられます。東京・神田のカレー専門店「トプカ」代表からは、食料品のみを対象とした減税に疑問を呈し、円高による材料費抑制の方が効果的だとの指摘も出ています。
一方、減税対象となる弁当店・中食側にも課題があります。原材料費や人件費の上昇が続く中、減税分をそのまま値下げに反映できるとは限らず、消費者が期待する「食料品が安くなる」実感と現場の実情にギャップが生じる可能性があります。値上げ・原価の圧力は中食側にも及んでいます。
この税率差は、実店舗を持たずデリバリー専用で営業するゴーストレストランの増加も後押ししています。2025年8月時点で報じられた食品デリバリー大手の事例では、売上原価率が前年85.4%から99.5%へ急上昇し、9か月間で売上高282.9億円に対し粗利がわずか1.4億円という薄利構造が明らかになりました。それでもゴーストレストラン自体は増加を続けており、税率差という制度上の優位性が、収益性の低いプレイヤーの新規参入を招いている構図がうかがえます。フードデリバリー業界全体の価格競争と手数料負担が、この構造をさらに厳しくしています。
外食の軽減税率格差は以前から指摘されてきた論点ですが、今回の食料品側のさらなる減税により、その格差が構造的にほぼ5倍近くまで広がる点が新しい局面です。ただし法案自体が未成立であるため、制度の詳細や施行時期は今後変わる可能性も残ります。
経営の打ち手
税率差を前提に、外食店が取りうる方向は大きく三つに分かれます。
- 店内飲食ならではの体験価値(接客・空間・出来立て感)を明確に打ち出し、価格差を納得してもらう方向