業態転換・多業態化とは
業態転換とは、既存の店舗・設備・立地を活かしたまま提供メニューやコンセプトを別業態に切り替えることです。多業態化は、1社が複数の異なる業態ブランドを同時に運営する経営スタイルを指します。
自社開発だけでなく、M&Aで他社ブランドごと取り込み短期間で店舗網を拡大する「M&A型成長」が目立ちます。帝国データバンクによると2026年1〜6月期の飲食業M&A件数は、過去最多だった前年同期比で約3割増加しました。最大金額はコロワイドによるカフェ・ベローチェ運営会社C-Unitedの買収で、9月時点でも年間33件ペースとほぼ並ぶ水準が続いています。背景には食料品値上げの9割超が原材料高によるもの(帝国データバンク調べ)という事情があり、規模の力で仕入れ価格を抑えようとする「戦略的M&A」の色合いが強まっています。出店・閉店・M&Aの一側面です。
買収は拡大だけの手段ではありません。FOOD & LIFE COMPANIESは2026年8月時点で、黒字化直後の子会社「京樽」をSRSホールディングスへ譲渡すると発表しました。海外事業への資源集中を優先した「選択と集中」型の判断です。
構造・原理:4つの転換パターンと撤退リスク
既存資産の転用:ユニシアHDは2026年8月21日、閉店した串カツ田中店舗をとんかつ専門「カツのジョー」に転換。資さんうどんは「ガスト」跡地や閉店したイタリアン「ラ・オハナ」跡地を居抜き活用し、2026年10月8日には横浜霧ケ丘店をオープン。さらに名古屋市熱田区の「ラ・オハナ 熱田一番店」(11月閉店予定)を転換し、2027年1月下旬に東海地域1号店「資さんうどん 熱田一番店」を出店する計画で、全国出店ペースを積み上げています。ニラックスも2026年10月30日、8月に閉店した「ガスト 町田小山店」をカジュアルイタリアン「イタリアン リゾート ペルティカ 多摩境店」へ転換し、ドリンクバーや食事メニューの充実で客単価向上を狙います。コロワイドグループのレインズインターナショナルも2026年10月9日、浦和で閉店した居酒屋「呑み処 土間酒場」をしゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶしゃぶ温野菜」へ転換しました。テンポス子会社マルシェも「八剣伝」を焼鳥「てんちゃん」へ、FS.shakeは買収した「串亭」をカジュアル串揚げ居酒屋へリニューアルしました。
既存業態の格上げ(プレミアム化):江戸一は2026年10月17日、「すたみな太郎八戸店」を全面改装し「すたみな太郎PREMIUM BUFFET八戸店」へリニューアル。内装刷新と限定メニュー、ファミリー向けサービスの強化により客単価向上を狙う、同一業態内の格上げ型転換です。跡地を使わず既存店舗を転換する点が居抜き型とは異なります。
専門特化型の裾野拡大:牡蠣専門のゼネラル・オイスターは2026年9月15日、東北初出店として「MARE&OYSTER」に業態転換。岡山市北区の居酒屋ラーメン店「麺酒一照庵 晴天櫓」も2026年10月7日、ご当地「笠岡ラーメン食堂 ハレトカシワ」へ転換し、味噌スープや鶏料理の定食を加えてメニューの幅を広げました。
業態融合:タリーズやサンマルクカフェがベーカリー機能を取り込むなど、単品単価の限界を補う動きが広がっています。開業から約10年営業してきた「俺のフレンチ 梅田」は2026年11月1日、フレンチとイタリアンを一つの店舗で楽しめる「俺のフレンチ・イタリアン 梅田」へリニューアルし関西初出店となりました。人気2業態を統合することで客単価や来店動機の幅を広げる狙いが見えます。渋谷の人気立ち飲み店「C'est ouf」(月商600万円)も、既存業態の成功に安住せず「Higgledy Piggledy」へ移転リニューアルし、メニュー表を置かない接客主導スタイルへ刷新した例があり、好調店でも業態刷新を検討する姿勢が参考になります。
M&Aによる再生・事業承継:コロワイドは創業地・逗子に町中華「甘太郎食堂」を出店し行列を記録。ホットランドは「よし平」を1年半で店舗数ほぼ2倍に拡大。福岡県久留米市の「焼肉ホルモンひろ屋」は2026年10月31日に閉店後、新たな事業主のもと同じ跡地で和牜焼肉「焼肉御縁」が11月中旬にオープン予定で、事業承継型の転換として進んでいます。
一方で転換が定着しない例もあります。安楽亭グループの「どん亭 町田成瀬店」は焼肉店からしゃぶしゃぶ・すき焼きへ転換後、1年に満たない営業期間で2026年9月30日に閉店しました。近隣の系列店撤退が先行しており、商圏内の需要・競合の見極め不足や親会社の店舗戦略見直しが背景にあるとみられます。業態転換は成功事例ばかりではなく、短期撤退の判断基準をあらかじめ設けておくことが重要です。
老舗BtoB企業の転換も参考になります。創業120年を超える滋賀の食品メーカー、ティーケーシンは味噌・醤油から産業給食・総菜OEMを経て冷凍食品事業へ軸足を移し、フランス乳製品ブランドの日本展開やスポーツチーム運営でブランド価値を高めています。為替差損を機に無借金経営へ転換した経験や、カリスマ経営から組織運営への移行も、業態転換を支える組織基盤づくりの一例です。
開業直後に業態転換する例も出てきました。岡山市北区の街中華「徳記」は開業からわずか1カ月で麻辣烫(マーラータン)専門店「徳記麻辣烫」へ転換。株式会社FTG Companyも2026年10月7日、大塚の「大阪焼肉・ホルモン ふたご大塚店」を韓国料理業態「ハンメ」へ転換するなど、既存ブランドのトレンド乗り換えが活発です。
業績は業態次第で明暗が分かれる
2026年7月期決算では、ラーメン「町田商店」のギフトが56%増益・増配、ラーメンチェーンのガーデンは油そばとの「二刀流」戦略で17ヶ月ぶりに既存店売上がプラス転換しました。一方できちりHDは純利益28.2%減、テンポスHDは飲食事業利益が9割減、SANKOマーケティングフーズは11期連続の最終赤字が続いています。2027年3月期第1四半期のコロワイドは売上収益850億円台(26.4%増)・営業利益25億9200万円(11.2%増)と増収増益を確保し総店舗数3199店に拡大。同じ業態を抱えていても、出店ペース・不採算資産の処理次第で業績が大きく分かれています。
2026年9月度のファミレス主要4社は既存店売上高がすかいらーく2.9%増、サイゼリヤ10.6%増、ジョイフル6.4%増、ロイヤルホスト3.2%増と全社プラスでした。すかいらーくは客数0.7%減ながら客単価3.7%増でカバーし全店売上高5.8%増を確保。会員数1660万人超の「すかいらーくアプリ」や秋フェア施策が下支えしており、同月は新店7店に加え業態転換も7店行われました。客数減を単価上昇と複数業態の運営で補う多業態化の実例といえます。










