フクタンの経営ノート
飲食note アプリ版毎日のニュースで、読めば読むほど、飲食経営が強くなる入手
飲食note経営ノート › 業態転換・多業態化(M&A型成長)

業態転換・多業態化(M&A型成長)

経営キーワード/業態転換・多業態化(M&A型成長)
最終更新:2026年9月14日 飲食note・フクタンの経営ノート

業態転換・多業態化とは

業態転換とは、既存の店舗・設備・立地を活かしたまま、提供メニューやコンセプトを別の業態に切り替えることです。多業態化は、1社が複数の異なる業態ブランドを同時に運営する経営スタイルを指します。

近年は自社で新業態を開発するだけでなく、M&Aによって他社ブランドごと取り込み、短期間で店舗網を拡大する「M&A型成長」が目立ちます。一方で、再建に成功した事業をあえて手放し、成長分野に資源を集中させる「選択と集中」型のM&Aも進んでいます。2026年8月18日時点の業界統計では、外食・フードサービス業界のM&Aは年初から33件と過去最多だった前年の34件にほぼ並ぶペースで推移しており、コロナ禍後4年連続で増加、コロナ前を上回る水準です。今年は100億円超の大型買収が3件発生し、コロワイドが「珈琲館」「カフェ・ベローチェ」運営会社を買収するなど有名ブランドを対象とした案件が目立ちます。出店・閉店・M&Aの両側面として捉えられます。

飲食経営にどう関係するか

単一業態への依存にはリスクがあります。2026年6月時点でユニシアの月次データでは、好調だった「串カツ田中」の既存店売上がマイナスに転じる一方、同グループの「ピソラ」がプラスとなる逆転が起きました。「鳥貴族」も同時期にマイナスとなっており、居酒屋・大衆酒場カテゴリー全体の飽和シグナルとも読めます。これを受け、ユニシアHDは2026年8月21日、6月に閉店した「串カツ田中 東大和店」を居抜きでとんかつ専門業態「ザクッと とんかつ カツのジョー 東大和店」に転換しました。専門業態から間口の広いとんかつへ商圏を広げ、稼働率向上と業態の陳腐化対策を狙う構造的な選択肢の一例です。

同じく既存資産の転用でも、すかいらーくは2026年8月28日時点で、不採算店をイタリアン業態「ペルティカ」に転換する形で店舗数を11店舗まで拡大していることが伝えられました。資さんうどんも同様にファミレス跡地の業態転換を進めており、2026年7月・8月時点で大阪・群馬の「ガスト」「ラ・オハナ」跡地に新店を出店したのに続き、2026年8月27日には埼玉県日高市の「ガスト日高店」を業態転換して「資さんうどん 日高店」を開業し、同社の埼玉初出店を実現しました。圏央道狭山日高ICに近い主要ルート沿いの立地を、新規に用地を探すより短期間・低コストで確保できた点が特徴です。閉店・売却だけでなく業態転換によって不採算物件を再生する道は、グループ内・提携先の既存物件活用という形で業界全体に広がっています。

多業態化そのものが利益を保証するわけではありません。2026年6月期のきちりHD連結決算は、売上高167億3000万円台を維持しつつ純利益は前期比28.2%減の大幅減益でした。SANKOマーケティングフーズも11期連続の最終赤字が続き、水産事業の構造改革費用が重荷になっています。テンポスHDも2026年7月期決算で飲食事業の利益が前期比9割減と急減し、ステーキチェーン「あさくま」も同時期の決算で減益となったことが判明しました。同じく2026年7月期決算では、和食レストランを展開する浜木綿が、値上げによる客単価上昇で売上高は過去最高を記録したものの、減損損失の拡大が響き純利益は減益となり、本店休業の影響で今期は減収を見込むと発表しています。一方、ラーメン「町田商店」を運営するギフトは2026年7月期決算で56%の増益を確保し増配を発表、豆腐料理などを展開する梅の花は最終損益が黒字転換した一方、洋食・カフェ業態のバルニバービは苦しい業績となるなど、同じ2026年7月期決算でも企業ごと・業態ごとに明暗が大きく分かれています。値上げで増収を実現しても、店舗資産の減損や主力拠点の休業という別要因が利益を圧迫する構図であり、こうした休業期間を改装や業態転換の準備期間として活用する考え方も選択肢になります。物価高や天候不順による客足変動、資産評価の見直しが、厨房機器販売と複合展開する企業からステーキ・和食専門チェーンまで業態を問わず利益率を圧迫しており、居抜き取得や業態転換によるM&A型再建を進める企業ほど、本体の既存事業側の収益改善も同時並行で問われる実態が浮かびます。対照的に、複数業態を抱えるコロワイドは2027年3月期第1四半期で売上収益850億3200万円(前年同期比26.4%増)、営業利益25億9200万円(11.2%増)と増収増益を確保し、総店舗数を3199店まで拡大しています。焼肉・グループ経営を軸に多業態展開するギフトホールディングスも、2026年8月度の月次で既存店売上高が前年同月比2.4%増にとどまる一方、全店売上高は26.2%増と大きく上回り、積極出店による店舗網拡大が業績の主因となっている構図がうかがえます。既存店の伸びが緩やかでも新規出店ペースが業績を牽引するという点は、多業態展開型チェーンに共通しやすい傾向です。同じ多業態展開でも規模拡大と利益成長を両立できるかで明暗が分かれています。

大手・チェーン動向では、クリエイト・レストランツHDが「磯丸水産」「かごの屋」など220超のブランド・1100店舗以上を展開し過去最高益を更新。ホットランドも築地銀だこの主食事業強化のため地方外食企業を買収し、2025年1月に子会社化した「よし平」は2026年7月時点で1年半で店舗数がほぼ2倍に増え渋谷駅前にも進出しました。

買収は拡大だけの手段ではありません。2026年8月時点でFOOD & LIFE COMPANIES(スシロー運営)は、2021年に取得した子会社「京樽」を黒字化直後にSRSホールディングス(和食さと運営)へ譲渡すると発表しました。海外スシロー事業への資源集中を優先した判断とみられ、業態転換・多業態化の判断が「拡大するか手放すか」の両輪で進むことを示す事例です。

運営元の交代を経てブランドが再生される案件も相次いでいます。寿司業態「肉寿司」は運営元が転々とした末、割烹業態「肉寿司本家」へ転換し再生される見通しです。テンポスHDの子会社となったマルシェは、総合居酒屋「八剣伝」から大衆専門酒場へのモデル転換を進める一方、増資資金の半分を借入返済に充てる方針で、M&A型再建の成果が数字に表れるまで時間を要する実態も見えます。2026年9月時点では、外食企業FS.shakeが買収した高級路線の串揚げブランド「串亭」について、恵比寿本店を大幅リニューアルしてよりカジュアルな“串揚げ居酒屋”業態に転換する動きが報じられました。買収後にまず旗艦店1店舗で業態を試し、反応を見ながら他店舗展開の是非を判断する段階的アプローチとみられ、既存ブランドの強みを壊さずにカジュアル化するという難しい舵取りが求められます。

老舗ブランドが自社内で新業態を立ち上げる動きも続いています。1959年創業の神戸・南京町の中華料理店「皇蘭」を運営する株式会社皇蘭は、2026年9月3日、地下街「デュオこうべ」に大阪発祥の「いずみカリー」を軸としたカレー・麺業態「いずみヌードル&カリー」を出店しました。同社はすでにとんこつラーメン「山神山人」も展開しており、看板の中華ブランドとは別に、地下街という回転率重視の立地に合わせた業態を追加した形です。既存ブランドの信頼を土台にしつつ、異なる客層・立地向けに新業態を試す手法として、中小・老舗企業にも応用できる考え方です。

中小・個人店でも業態転換・多業態化は珍しくありません。フレンチビストロから大衆酒場に転じた「フレンチマン」は19席で月商1300万円超を記録し10店舗まで成長、FCパッケージ提供も始めています。錦糸町で複数の居酒屋業態をドミナント展開してきたBuzz Foodsも、初のビストロ業態「洋食堂オレん家゛」を出店し、犬同伴可の個室が想定以上の集客要因となりました。

人通りの多い一等地でも、業態転換が短期間で繰り返される例があります。葛飾区亀有の商業ビル1階テナントは、高級食パン専門店「一本堂」→アップルパイ専門店→りんご飴専門店「孝太郎」(2026年5月閉店)→パン屋「TAZAN BAKERY&LAB.」(2026年9月時点で開店準備中)と、数年で4業態が入れ替わっています。同様に、神奈川県相模原市のJR淵野辺駅北口オーロラデッキでは、蕎麦店「あじさい茶屋 淵野辺店」の跡地に博多一風堂監修・JR東日本クロスステーション運営の「TOKYO豚骨BASE MADE by 一風堂 淵野辺店」が2023年9月に開業しましたが、約3年間の営業を経て2026年8月31日に閉店しました。首都圏で13店舗を展開する大手監修ブランドの一員であっても、個別店舗単位では契約期間や収益性の判断で撤退に至ることを示す事例であり、テナント選定・契約時にはこうした過去の入れ替わり履歴を確認する価値があります。

業態転換は実店舗を伴うものだけではありません。2026年8月13日時点で、すかいらーくHDは宅配専門の新業態「ゴーストレストラン」導入を発表しました。背景には、2026年4月予定の消費税減税で飲食料品の税率が1%に下がる一方、店内飲食は10%据え置きとなる見通しがあり、外食の軽減税率格差による自宅消費需要の増加を先取りした対応とみられます。もっとも2026年9月14日時点の業界調査では、減税時に売上増を見込む企業は49%あった一方、営業利益増を見込む企業は22%にとどまり、53%が「変わらない」と回答しています。減税・復元の2度にわたるシステム改修・事務コストの負担も指摘されており、業態転換の効果測定にはこうしたコスト増を織り込む必要があります。

なお、賃金面の業種間格差も業態転換を後押しする要因になり得ます。2026年3月分の毎月勤労統計調査確報では、実質賃金指数が2020年平均を100として87.1と購買力はなお約13%低く、飲食業は7.2%の減給という結果が示されており、人手・賃金の業種間格差は今後も拡大するとみられます。

経営の打ち手

この続きは有料会員限定です

飲食noteの有料プラン(月々2,980円/年間一括20,400円・5ヶ月ぶんお得/初めてご契約の方は7日間無料トライアル)で、経営ノートの全文とAIコンサル「フクタン」が使い放題になります。

飲食noteで続きを読む
根拠にした主なニュース
関連する経営ノート

飲食noteは、業界ニュースとAIコンサル「フクタン」の解説を毎日無料で読める、飲食経営者のためのメディアです。無料会員になると、自分の業態を選んで関係するニュースを前に出せます。