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洋食・バルの経営動向と商品開発の勝ち筋

業態別/洋食・バル
最終更新:2026年7月28日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

洋食・イタリアン・バル業態では2026年7月時点で三つの流れが重なっています。ひとつは低価格路線の代表格だったサイゼリヤが、円安による原価上昇を背景に9月以降の価格改定と、全国統一価格から立地別価格への移行を検討し始めたこと。もうひとつは、ステーキ・ハンバーグ業態が値上げと体験価値の刷新を両立させて過去最高益を更新していること。三つめは、大手グループによる旗艦店出店や空港・公園など新たな立地への進出です。

サイゼリヤの2026年8月期第3四半期決算は、売上高2213億32百万円(前年同期比17.5%増)、営業利益133億27百万円(同25.6%増)、経常利益136億10百万円(同24.9%増)、純利益87億3百万円(同11.8%増)と大幅な増収増益でした。自己資本比率は62.9%と財務基盤も健全です。それでも松谷秀治社長は7月15日の決算会見で、2020年のミラノ風ドリア端数調整以来約6年ぶりとなる本格的な値上げを視野に入れていると発言。国内平均客単価862円がファストフードの平均ランチ代(約796円)に接近しており、「アフォーダブルプライス」を維持しつつ立地別価格への移行も選択肢とする方針です。発表後の7月16日には株価がストップ高、17日終値は7600円となり、市場は値上げへの転換を好感しました。増収増益の最中にあえて価格に手を付けるのは、製造直販モデルによる効率化努力だけではコスト上昇を吸収しきれなくなりつつあることの表れと見られます。

ステーキ・ハンバーグチェーンのブロンコビリーは、2025年11月と2026年4月の2度の値上げに加え、サラダバーをビュッフェ形式に刷新して客単価を引き上げ、既存店売上高は前年比107.7%と好調に推移。2026年12月期上半期は営業利益57.5%増、純利益53.3%増といずれも過去最高を更新し、通期予想も上方修正しました。値上げ後も客数が落ちなかった点が業界内で注目されています。

大手グループの動きとしては、ワタミグループが2026年7月31日に東京・新宿歌舞伎町へ「TGI FRIDAYS 新宿歌舞伎町店」(席数105席、11時〜23時年中無休)をグランドオープンし、インバウンド・若年層を狙います。名古屋発の「あさくま」は2026年8月中旬、中部国際空港セントレアに初の空港店(71.8坪・96席)を開業し、地元密着ブランドから全国区への転換を図ります。ファミリー向けチェーンのビッグボーイも春夏グランドメニューを導入し、看板の大俵ハンバーグにホタテやチーズを組み合わせるなど派生商品を拡充しています。値上げ・原価商品開発集客・販促が同時に進む局面が続いています。

構造・原理

洋食・バル業態は輸入食材(乳製品・肉・小麦・ワインなど)への依存度が高く、円安の影響を受けやすい構造があります。サイゼリヤのように自社工場・製造直販体制で高水準の効率化を続けてきた企業ですら、増収増益の最中に価格改定を検討せざるを得なくなったことは、業界全体の値上げ機運を後押しする材料になっています。ファストフードとの客単価差が縮小している事実は、価格帯の境界線があいまいになりつつあることを示しています。

一方でステーキ・ハンバーグ業態のように、値上げと体験価値の向上(サラダバーのビュッフェ化など)を組み合わせることで、客単価と客数の両面を押し上げ増益を実現している例もあります。「無料提供の付加価値化」による単価転嫁は、値上げそのものへの抵抗感を和らげる手法として位置づけられます。原価上昇圧力を「値上げ」だけでなく「体験価値の上乗せ」で吸収する道が広がっています。

同時に、従来のジャンル区分や商圏の常識が薄れ、大型旗艦店による繁華街での話題づくり(TGIフライデーズ)、地域密着ブランドの空港出店(あさくま)、公園という公共空間への出店(Park-PFI制度によるベーカリー出店)など、立地選択そのものが差別化戦略の一部になっています。こうした動きはSNS拡散力が強い時代における集客の一形態であり、新業態・トレンドの一環と捉えられます。空港のような一見客中心の立地では、サラダバーなど視覚的にわかりやすい強みが、短時間で店の個性を伝える手段として機能しやすい点も特徴です。

経営の打ち手

価格戦略としては、全国一律価格を維持するか立地別価格に移行するかという選択に加え、看板商品の価格は維持しつつ周辺メニューで調整する組み合わせ型のアプローチが考えられます。値上げに踏み切る場合は、仕入れルートや調理工程の棚卸しを先に行い、「値上げに頼らず吸収できるコストがないか」を確認したうえで、コスト構造の変化を客観的な事実として説明することが納得感につながります。サイゼリヤの反応を見る限り、値上げ前の効率化努力と顧客との信頼構築が、値上げ後の客離れを左右すると考えられます。

ブロンコビリーの事例が示すように、サラダバーやドリンクバーなど既存の無料サービスを有料の付加価値メニューへ再設計する道は、値上げ幅を抑えつつ客単価を引き上げる有効な手法です。ビッグボーイのように、看板メニューをそのまま置き換えるのではなく、季節限定の派生商品やトッピング・付け合わせのグレードアップで目先を変え、客単価を底上げする方法もあります。

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