フクタンの経営ノート
飲食note アプリ版毎日のニュースで、読めば読むほど、飲食経営が強くなる入手
飲食note経営ノート › 洋食・バル

洋食・バル業態の値上げと収益構造の分岐点

業態別/洋食・バル
最終更新:2026年9月8日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年9月8日時点で、洋食・イタリアン・バル業態では値上げ機運の高まりと決算の明暗、大手チェーンの隣接業態への進出、老舗の資産活用に加え、中小企業による地域密着型の多店舗展開やジビエを使った商品開発、季節限定メニュー競争、さらに高級ホテルによる海外著名職人とのコラボ展開も進んでいます。

サイゼリヤは約6年ぶりの値上げを検討中で、9月以降に主力商品が値上げされる可能性が報じられています。一方で社長は「価格は変えない」逆算経営術を語り、メニュー絞り込みとサプライチェーン再構築で原価を抑えてきた経緯を説明しています。2026年8月期第3四半期は純利益87億円(前年同期比12%増)と過去最高を更新し、外食53社を比較した分析でも「外食最強」と評されるほどの競争力が可視化されています。ロイヤルホストは9月16日にグランドメニューを刷新し価格改定も同時実施、あわせて客席130席の大型新店を千葉・新鎌ケ谷に開業します。さわやかも看板「げんこつハンバーグ」を値上げし、客離れにはつながっていないと報じられています。

決算面では格差が広がっています。ブロンコビリーは2026年12月期中間期で営業利益率が8.4%から11.7%へ改善し、サラダバーのビュッフェ化と食肉加工会社の子会社化が背景です。グローバルダイニングも同期に営業利益が231.1%増となり、増収に頼らない構造改善が主因でした。ただし2024年8月の月次では、既存店売上高が前年同月比1.5%増となった一方、全店ベースでは0.7%増にとどまり、出店・退店の入れ替えが全体の伸びを抑える構造が見えています。あさくまは26年1月期決算で28年ぶりに売上高100億円を超え、27年1月期第1四半期はさらに売上高が前年比25%増と好調が続き、廣田陽一社長は3年後に売上高200億円達成を目標に掲げています。一方でひらまつは増収を確保しながら営業利益が62.3%減、ゼネラル・オイスターも増収の中で営業利益が92百万円の赤字へ転落し、牡蠣一本足の調達構造がリスクとして表面化しています。

バルニバービは26年7月期経常利益予想を54.8%下方修正しましたが、主因は不動産事業の売上計上の期ズレで主力の「ガーブ」は好調です。同社はさらに、店舗の「所有」と日々の「運営」を切り分ける地方創生ファンドの運営会社を新設し、資金効率を高める新たなスキームに踏み出しました。攻めの投資と業績下方修正が同時期に表面化している点が、業界全体の構造的な難しさを象徴しています。

大手による隣接業態進出も相次いでいます。叙々苑は「叙々苑ステーキJJ」基幹1号店を横浜に開業、トラジも「牛印」の多店舗化を推進しています。すかいらーく傘下ニラックスは不採算店をイタリアン「ペルティカ」に転換する形で多店舗展開を続け、9月1日時点で10店舗達成を記念した10%OFFキャンペーンを実施しています。サッポロビールも1934年開業の「銀座ライオンビル」を10月27日にリニューアルし、既存のビヤホールを残しながら4階に新ブランド体験拠点を併設する計画を発表しました。プロントも10月16日、JR大分駅直結の商業施設内にワイン酒場の新業態「ディプント」を出店します。ブルガリ ホテル東京は9月5日から、ローマの人気店を手掛けるピッツァ職人ピエール・ダニエーレ・セウとのコラボメニュー提供を開始しています。

郊外型イタリアン「バンサン」は店舗数が100店舗に迫る規模まで拡大し、新宿・京王百貨店へ新規出店しました。郊外エリアから都心の商業施設へと展開範囲を広げる動きで、同業態では「PISOLA」との競争が激化しているとみられます。中小企業の動きも見られます。イタリアン&スパニッシュ居酒屋「ダッグアウト」を運営する十八商店は、神保町エリアで1号店に続く2店舗目を開業し、将来的には5店舗規模の地域密着型ドミナント展開を目指しています。クラフトレストラン「PISOLA」は、鳥獣被害対策として猪肉とフォアグラを組み合わせた限定パスタを全店で発売し、料理長自らが産地の加工場で品質と供給体制を確認しています。

季節限定メニュー競争も本格化しています。複数業態を横串で企画する「月見フェア」が全34品を揃えた大型展開を見せる一方、婚礼施設併設のイタリアンが秋魚を使った限定パスタで婚礼と一般客の両方を狙う動き、ホテル館内の複数レストランで秋メニューを一斉展開する動きも出ています。クラフトビール業態でも、スプリングバレーブルワリー東京(代官山)が9月14日に「秋刀魚 de ブリュワーズナイト」を開催し、クラフトジン蒸溜所のボタニカル残渣を原材料に使った店舗限定醸造ビールを発売するなど、他業種の副産物を転用した季節限定商品が話題性づくりの新たな手法として広がっています。値上げ・原価商品開発集客・販促が同時に問われる局面です。

構造・原理

洋食・バル業態は輸入食材への依存度が高く、円安や国際相場の影響を受けやすい構造があります。サイゼリヤの逆算経営が限界に近づいている可能性は、コスト圧力が原価低減努力の範囲を超えつつあることのシグナルです。一方で53社比較の分析が示すように、同じ環境下でも競争力の差は明確に数値化されるようになっています。

ブロンコビリーとグローバルダイニングの決算が示すのは、増益の主因が「増収効果」ではなく「利益率の変化」にあるという共通構造です。既存店の堅調さと全店ベースの伸び鈍化が併存する場合、出店・退店の入れ替えそのものが業績を左右する要因になり得ます。あさくまが四半期ごとに高い成長率を継続して示している点は、独自の経営手法を一時的な施策で終わらせず継続的にアップデートし続けることの重要性を示しています。逆にひらまつとゼネラル・オイスターの決算は、増収していても利益率悪化が全体を押し下げる裏面を示しています。バルニバービのように飲食事業と不動産・地方創生事業を併営する企業では、店舗の実力とは別に副事業の投資回収タイミングが決算全体を左右し、所有と運営を分離するファンド型スキームは資金効率を高める新しい選択肢として注目されています。

バンサンの都心進出や十八商店のドミナント展開、ペルティカの10店舗達成は、規模も業態も異なりますが、既存エリアでの成功を足場に商圏を広げる「面の拡大」という共通局面にあります。資本力のある企業ほど客層の厚い都心で規模拡大を試し、中小企業ほど資本力に頼らず地域内でシェアを固める選択を取る傾向がうかがえます。季節限定メニュー競争が業態を問わず一斉に起きる背景には、既存の商圏・既存のメニューだけでは成長が頭打ちになるという共通の危機感があり、単一メニューの投入ではなく複数の接点を同時に作る発想が広がっています。同時に、業務用の常温・冷凍食材で手の込んだソースやスープを簡易化する動きは、人手不足下での調理工程簡略化という別の構造課題への対応でもあります。

経営の打ち手

値上げや増収を単独の指標で終わらせず、増収効果と利益率変化の効果を分けて確認する視点が求められます。

この続きは有料会員限定です

飲食noteの有料プラン(月々2,980円/年間一括20,400円・5ヶ月ぶんお得/初めてご契約の方は7日間無料トライアル)で、経営ノートの全文とAIコンサル「フクタン」が使い放題になります。

飲食noteで続きを読む
この論点を深掘りした特集
根拠にした主なニュース
関連する経営ノート

飲食noteは、業界ニュースとAIコンサル「フクタン」の解説を毎日無料で読める、飲食経営者のためのメディアです。無料会員になると、自分の業態を選んで関係するニュースを前に出せます。