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中華料理店の倒産最多と大手参入、町中華の分岐点

業態別/中華料理
最終更新:2026年9月10日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

東京商工リサーチによると、2026年1〜7月の中華料理店倒産は22件(前年同期比69.2%増)で、2012年以降で最多を更新しました。このペースが続けば年間で過去最多だった2002年の48件を超える可能性があります。原因別では「販売不振」が20件と大半を占め、負債1億円未満・従業員5人未満がそれぞれ18件と、小・零細規模の倒産が目立ちます。

飲食業全体でも2026年7月の倒産は112件(前年同月比6.6%増)で、1997年以降の7月として過去最多でした。「物価高」倒産、「人手不足」倒産、「人件費高騰」倒産がいずれも急増し、居酒屋・ラーメン店・中華料理店などの日常業態が目立っています。人手・賃金値上げ・原価の圧力が同時に効いている構図です。

個人経営の老舗にも変化が及んでいます。横浜市港北区で70年以上続いた中華料理店「おがさや」は2026年8月29日、店主の体調不良を理由に営業を終了しました。最終日は常連客の長い行列ができたといい、後継者不在のまま店主の健康が経営継続の限界点になった典型例です。事業承継の課題が個人店特有のリスクとして改めて浮き彫りになりました。

大手チェーンの町中華・アジア系業態への参入とメニュー刷新は加速しています。コロワイドグループは逗子に町中華業態「甘太郎食堂」2号店を出店し行列を作り、ハイデイ日高「熱烈中華食堂日高屋」は新潟市内2号店の出店見通しが報じられました。プレナス「MKレストラン」(九州22店舗)は2026年9月10日、全食べ放題コースに飲茶4種とマンゴープリンを追加し看板の小籠包の味も改良、オリジン東秀は同9日、千葉県松戸市の駅前一等地に定食・アルコール・テイクアウトを揃えた複合業態「れんげ食堂Toshu 北小金店」を出店しました。老舗「バーミヤン」は40周年記念メニュー「謝謝バーミヤン」を展開しています。銀だこ運営会社の中華業態参入は反応が限定的とされ、参入は容易でも定着の難しさが浮かびます。

大手の7月既存店売上高は明暗が分かれ、ハイデイ日高6.1%増、リンガーハット単体5.0%増、王将フードサービス0.3%増が好調な一方、丸亀製麺は2.5%減でした。物価高対応も分かれ、イートアンド「一品香」はハーフサイズを導入、王将はレギュラーサイズ維持を続けています。

個人店の値上げ実態も具体的な数字で明らかになっています。福島県郡山市の中国料理店「姑娘飯店」は豚肉・鶏肉の高騰を受け、鶏のから揚げ(5個)を580円から900円へ320円値上げしたほか、前年12月には五目チャーハンを900円から1100円に200円値上げするなど、麺類も含め値上げ幅は100円から800円程度に及びました。同店代表は仕入れ値と光熱費双方の上昇を理由に挙げ、常連客から反発の声もあったと説明しています。

季節限定・高単価メニューの動きも活発です。銀座の中国料理店「GINZA沁馥園」は2026年秋、上海蟹解禁に合わせフカヒレやアワビと組み合わせる期間限定コースの提供を始めます。台湾カフェ「春水堂」は同年9月15日から焼き芋タピオカと酸辣湯麵の秋限定2品を投入し、ドリンクとフードを両方季節仕立てにしています。麺業態でも9月15日より鶏白湯らーめん・担担麺・麻辣担担麺の期間限定3種が販売開始されるなど、優しい味と刺激的な辛味系を併存させる商品構成が広がっています。

山形市の人気店「中華美食屋 江俣店」は店内改装のため8月23日から臨時休業し、9月12日に新メニューと特典付きでリニューアルオープンします。併設の餃子無人直売所も同時期に休業しており、店舗全体でのリブランディングとして休業期間を活用する動きです。

風評リスクの事例も浮上しました。韓国・ソウルの中華料理店では、客が異物混入をSNSで告発したものの、防犯カメラ映像で自作自演の疑いが判明し、店主が法的措置を検討する事態となりました。

構造・原理 大手参入と個人店淘汰が同時進行する理由

中華料理は仕込みの標準化がしやすく、点心・麻辣湯・炒飯など単品でも専門性を訴求できるため、既存ブランドの派生業態として横展開しやすいジャンルです。プレナスやオリジン東秀のメニュー刷新・新業態出店、バーミヤンの周年施策は、いずれも既存資産や資本力を軸にした話題づくりの一形態です。大手の7月実績の差も同じ裏返しで、値上げの浸透とメニュー力で客単価と来店頻度を両立できる企業と、客数減を吸収しきれない企業に分かれています。

個人店側では、コストショックを吸収する体力の差が生死を分けています。倒産22件のうち負債1億円未満・従業員5人未満がそれぞれ18件を占めるというデータは、体力の乏しい小・零細店に打撃が集中していることを裏付けます。「姑娘飯店」のように主力食材である豚肉・鶏肉の値上がり分をそのまま価格転嫁せざるを得ない店ほど、常連客の反発という短期的な痛みを抱えながら値上げを断行しています。加えて「おがさや」の事例が示すように、個人店では店主自身の健康や高齢化がそのまま事業継続リスクに直結する構造的な脆弱性があります。後継者や引き継ぎ体制がないまま経営を続ける店ほど、突発的な事情が閉店の引き金になりやすいのです。

信用リスクの構造も変化しています。SNSの拡散力は集客に役立つ一方、根拠のない告発一つで店の評判が一晩で傷つくリスクを抱えます。韓国の事例では防犯カメラの記録が店側の潔白を証明する決め手となりましたが、記録がなければ立証は困難だったと考えられ、記録体制の有無が信用防衛の分かれ目になります。

話題性のある町中華ジャンルほど、大手が続々参入しても定着は容易ではないという現実もあります。銀だこ運営会社の中華業態参入の反応が限定的だったことは、参入と定着の間に距離があることを示しています。

経営の打ち手

季節限定・高単価コースで客単価を作る

GINZA沁馥園の上海蟹コースのように、季節性の高い高級食材を軸にしたコース展開は、客単価の底上げと話題性を両立させる手法です。仕入れコストが読みにくい食材は、コース形式で価格を包括的に設計することでリスクを分散できます。商品開発の視点で自店の看板商品にも応用できます。

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