フクタンの経営ノート
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中華料理店の倒産最多と大手参入が同時に進む理由

業態別/中華料理
最終更新:2026年10月26日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

東京商工リサーチによると、2026年1〜7月の中華料理店倒産は22件(前年同期比69.2%増)で2012年以降最多を更新しました。負債1億円未満・従業員5人未満がそれぞれ18件を占め、小・零細店への打撃が目立ちます。人手・賃金と値上げ・原価の圧力が同時に効いています。

「物価の優等生」とされてきたもやしにも値上げの波が及んでいます。ある中華料理店では仕入れ値が2、3カ月前の1袋19円から1カ月前25円、先週には30円まで上昇し、1日20袋消費する店で10日あたり約2000円のコスト増となっています。種子・包材資材の原材料コスト上昇が背景にあり、客への価格転嫁が難しいまま店側の工夫でしのいでいる実態がうかがえます。

個人店の閉店・交代が続いています。千葉県我孫子市の「福照飯店」が10月1日付で閉店、仙台市太白区の中華料理店が9月30日に閉店、花巻市の70年続く中華食堂が10月24日閉店確定、富山駅前「CiC」の「四川乃華 小吃」は約6年の営業を終えました。一方で福岡市内では今年に入り中華料理店の新規開業が7軒以上相次ぎ、個店の淘汰と新規参入が同じ地域で併走しています。

大手チェーンは軒並み増益・海外展開を強化しています。イートアンドホールディングス(大阪王将)の2027年2月期第2四半期累計決算は、売上高202億円台(同1.7%増)、経常利益7億円台(同44%増)と大幅増益でした。主力の冷凍ギョウザが初めて前年割れとなった一方、ワンプレート商品や冷凍小籠包・シュウマイが好調で食品セグメントを押し上げました。同社は北米・ASEANでM&Aを活用した海外事業拡大方針を打ち出し、台湾市場向けにも新商品2品を投入するなど海外展開を加速しています。リンガーハットも値上げ効果で営業利益が約4割増え、新社長体制のもと国内の収益改善を土台に海外展開を強化する方針です。日高屋を展開するハイデイ日高は過去最高益を更新し、690円の濃厚豚骨醤油ラーメンで「節約外食」需要の取り込みに動いています。王将は値上げを重ねながら第1四半期営業利益が52.8%減と苦戦する一方、秋の新メニュー「にんにくゼロ生姜餃子」のリニューアルを発表しました。

高単価業態・ホテル業態の刷新も目立ちます。ミシュラン一つ星を3年連続獲得した中華「Series」が東京ソラマチ31Fに2号店「Series the Sky」を出店し、広東料理とワインペアリングで景観を活かした記念日需要を狙います。福島県郡山市のホテル内中国料理店「唐紅花」は個室完備の新形式で11月6日にリニューアルオープンし、宴会・会食需要への対応を強化します。

商品開発・販促の切り口も広がっています。鳥取県の米子南高校と大阪王将米子店が連携し、学生考案メニューの試食審査会を実施しました。複数ブッフェ業態を展開するニラックスは、中華専門「THE BUFFET」を含む全業態で秋限定10%OFFクーポンを配信しています。専門店・地域店の商品開発も活発で、麻婆豆腐専門店がクラウドファンディングで目標超の700万円を集め、代官山の麻辣湯専門店がトマト豆乳のイタリアン風新作を発売、大阪の餃子専門店「点天」が看板の一口餃子を駅弁化しJR新大阪駅で発売しました。フォーシーズは自由が丘の新商業施設に本格中華「香華園」の2店舗目を出店しています。

構造・原理

中華料理は仕込みの標準化がしやすく、点心・麻辣湯・炒飯など単品でも専門性を訴求できるため、既存ブランドの派生業態として横展開しやすいジャンルです。大阪王将の海外M&A・台湾新商品や「香華園」の多店舗展開は、既存資産を軸にした業態転換・面展開という共通点を持ちます。

値上げと業績の関係は単純ではありません。王将は値上げを重ねても客数減・利益半減が進む一方、日高屋は690円という低価格帯の新メニューで「節約外食」需要を取り込む二段構えを取っています。もやしのような一見安定した食材にも静かな値上げが進んでおり、看板メニューの原価が積み上がる構造は個人店ほど転嫁が難しく体力を削ります。

利益の作り方にも構造的な示唆があります。リンガーハットは値上げ効果で営業利益が約4割増え、イートアンドも増収率以上に経常利益が伸びました。両社に共通するのは、売上の伸び幅を上回る利益の伸びであり、「客数を増やす」ことと「利益率を上げる」ことが別の課題であることを示しています。イートアンドの事例は看板商品(冷凍ギョウザ)が初めて前年割れした中での増益であり、単一商品への依存から新カテゴリー・海外展開への分散が利益を支えた点が注目されます。

高単価化と低価格化が同じ業界内で両立している点も特徴です。「Series」のようなミシュラン業態がワインペアリングと景観で客単価を引き上げる一方、日高屋は690円の低価格メニューで客数を確保しています。立地・ブランドの強みに応じて価格帯戦略が分岐している構図です。

専門店の資金調達・販路開拓にも新しい型が見えます。マーボードウフ専門店のクラウドファンディングや点天の駅弁コラボは、単品特化型の業態ほどストーリー性が強く、資金調達・中食転用の双方で異業種連携の相性が良いことを示しています。集客・販促と商品開発が重なる領域です。地域の教育機関との連携も、人材育成と話題化を同時に狙う手法として広がりつつあります。

個人店側では、コスト吸収の体力差と店主の高齢化が生死を分けています。我孫子・花巻・仙台の閉店に共通するのは、後継者不足や経営者の高齢化といった個店側の事情と見られます。

経営の打ち手

値上げ一本足ではなく低価格帯メニューも併用する

日高屋の690円ラーメンのように、値上げ一辺倒ではなく低価格帯の看板メニューで客数を確保しつつ、他メニューで利益を確保する二段構えの価格戦略が有効です。値上げ・原価の観点で四半期ごとに客数・単価・利益を点検する習慣が重要です。

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