いま何が起きているか
2026年10月22日時点で、韓国料理・韓国風メニューは全国で出店ラッシュが続く一方、閉店・撤退・業態転換の事例も並行して増えています。
株式会社Reviewの調査では、店名に「韓国」「コリア」を含む開業数は2023年をピークに減少傾向にある一方、東京・大阪など主要都市への出店拡大は続いています。開業ラッシュは一服したものの、需要そのものは「話題性で人が集まる業態」から「定番として選ばれる業態」への移行期に入っていると捉えられます。
商業施設による誘致も加速しています。仙台PARCO2は開業10周年を機にレストランフロア「パルイチ」を12月から大幅刷新し、韓国料理店「韓美膳」や博多天ぷら・もんじゃなど5店舗超を集中誘致することが決まりました。新潟のイオンモール新潟亀田インターのフードコートにも「韓美膳」がオープンし、冷麺や屋台グルメ風の軽食を展開しています。大阪市浪速区のHASSIN(東直人社長)が運営する創業30年の「まだん」は、商業施設「KITTE大阪」に4店舗目を出店し、客単価はランチ約1700円・ディナー約4000円と既存の鶴橋本店・阪急東通り店にないメニューを用意し、日本人の味覚に合わせた新店として商業施設出店を本格化させています。
多店舗展開では、八王子の「豚キング」が2026年9月24日に2号店を駅前エリアに出店し、地域密着型の面展開を進めています。関西5府県で展開する「コリアンダイニング李朝園」は11月下旬、千葉・流山おおたかの森へ関東初出店することが確定し、地方発フォーマットの東京圏進出が具体化しています。
専門特化の動きも続いています。ナッコプセ鍋専門店「サウィ食堂」は池袋西口・京都への出店を重ね、10月10日には池袋西口店がオープンしたほか、12月には岡山市北区・平和町へも新規出店することが分かり、コリアンタウン依存からの脱却と地方都市への拡大が同時に進んでいます。大阪・なんばの「和韓料理 スンドゥブ専門店 じゅろく なんば別邸」は10月26日から、日韓の出汁をブレンドしたスンドゥブに主食のうどんを組み合わせた冬季限定「和韓特製スンドゥブうどん」(税込1,650円)を投入し、看板メニューに派生商品を加える形で季節需要を取り込んでいます。新規参入では、奈良市役所そばにソウル出身オーナーがキンパを看板にプロデュースする新店が開業するなど、本場出身者による単品特化型の開業も各地で続いています。
既存業態からの転換という選択も目立ち始めました。複数ブランドを運営する株式会社FTG Companyは、大塚の「大阪焼肉・ホルモン ふたご大塚店」を業態転換し、韓国料理新ブランド「ハンメ」として10月7日にグランドオープンしています。
一方で閉店・撤退も相次いでいます。札幌の「マビの台所」大通店が8月31日に閉店したほか、長野のテイクアウト専門「SOLARIA」は原材料・人件費高騰で破産準備に入りました。韓国本国でも「キムガネ」1号店の閉店、1000店超を展開した「ノルブ」の企業再生手続き申請など、急拡大したフランチャイズの失速も改めて示されています。
構造・原理:単品特化・多業態化・業態転換が同時に進む理由
今月の事例を見ると、複数の出店戦略が同時に勢いを増しています。ナッコプセ専門「サウィ食堂」やスンドゥブ専門「じゅろく」、奈良のキンパ新店のように一品に絞り込む「単品特化型」が広がる一方、「まだん」のKITTE大阪4号店はランチ・ディナーで単価帯を分ける「多業態対応型」を採用しています。さらにFTG Companyの「ハンメ」のように、既存の近接業態(焼肉)を丸ごと韓国料理へ業態転換する「ブランド刷新型」も加わりました。同じ韓国料理という業態の中で、客単価確保や差別化のアプローチが複数方向に広がっているのが特徴です。
単品特化は看板メニューの専門性で話題性と行列を作りやすい反面、客単価の波に弱いという弱点があります。「サウィ食堂」が都内・京都にとどまらず岡山など地方都市へも出店を広げている事例や、「じゅろく」が人気のスンドゥブに主食を組み合わせて季節限定の派生商品を作った事例は、既存の看板を活かしながら新規投資を抑えて単品特化を深掘りする手法を示しています。多業態対応は初期投資や運営の複雑さが増すものの、「まだん」のように路面店中心だったブランドが商業施設という新しい販路に進出することで、テナント賃料の高い立地でも客単価帯を分けて稼働率を平準化できる利点があります。業態転換は新規出店よりも初期コストを抑えられる反面、既存顧客の離反リスクと向き合う必要があります。自店の立地条件や投資余力によって、どの方向に寄せるべきかを整理する価値があります。
商業施設側が飲食を集客の核に据える動きも顕著です。仙台PARCO2のフロア刷新やイオンモール新潟亀田インター、KITTE大阪への「まだん」出店は、商業施設が韓国料理を「若年層を呼べる確実な集客装置」として扱い始めていることを示しています。
サムギョプサルやキンパなど単品特化型メニューは調理オペレーションを標準化しやすく、参入障壁が低い分、価格競争や原材料高騰の影響を直接受けやすい構造もあります。キンパチェーンの閉店やテイクアウト店の破産は、薄利多売業態が値上げ・原価の圧力を吸収しにくいことを示しています。奈良のようにソウル出身オーナーが本場感を前面に出す開業パターンが各地で増えており、近隣店にとっては新規競合として注視すべき動きです。
韓国発の予約・ウェイティングアプリcatchtableのデータでは、会員数1500万人・加盟店3万店に達し、ウェイティング機能の利用回数が予約機能を上回っています。その97.2%が客単価5万ウォン(約5,731円)以下の店舗で発生しており、事前予約は高単価・コース料理の業態で、当日ウェイティングは回転率重視の業態で使われる棲み分けが見えます。
ホリイフードサービスの全店データ分析では、口コミ評点が高い店舗ほど売上高も高い正の相関が確認されており、MEO対策や口コミ管理が価格以外の差別化軸として数字で裏付けられています。
経営の打ち手
1. 既存メニューへの掛け合わせ:かっぱ寿司や赤から、松屋のように、看板メニューの味付け技術に韓国調味料を組み合わせ、期間限定商品として低リスクで投入する。「じゅろく」がスンドゥブに主食のうどんを組み合わせて季節限定化した事例のように、既存の人気商品に派生商品を加える発想は投資を抑えつつ話題性を作れる。
2. 単品特化での差別化:サウィ食堂やカンジャンケジャン専門店、奈良のキンパ新店のように、専門性の高い一品を看板に据え、コリアンタウン以外での成立可否を検証する。専門性は話題性を作りやすい反面、客単価の波に弱い点を踏まえ、繁忙期の仕込み体制を厚くしておく。












