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韓国料理店経営の現在地と生存戦略

業態別/韓国料理
最終更新:2026年9月8日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年9月時点で、韓国料理・韓国風メニューは大手チェーンから専門店、異業種企業まで幅広い動きが続いています。

株式会社Reviewが店名に「韓国」「コリア」を含む全国3,083件の開業データを分析した調査では、開業数は2023年をピークに減少傾向にある一方、東京・大阪など主要都市への出店拡大は続いています。K-POPや韓流ドラマを契機に広がった韓国グルメ人気は一過性のブームを超え、身近な食の選択肢として定着しつつある段階にあるとみられます。開業ラッシュは一服したものの需要が縮小したわけではなく、「話題性で人が集まる業態」から「定番として選ばれる業態」への移行期に入っていると捉えられます。

磯丸水産の韓国フェア、赤からの「ナッコプセ」投入、ピザハットの韓国風ビビンバピザ、ほっともっとの牛スンドゥブ弁当など、業態を問わず韓国メニューが夏季限定商品として活用されています。松屋も2026年8月25日から自社製「富士山キムチ」を使った「豚キムチ定食」(890円)を復活販売しており、既存の仕込み資産を活かした投入例となっています。奈良・船橋・柏など専門店の出店も続き、渋谷にはすき焼き店運営会社が韓国焼肉の新業態「良味苑」を開業しました。

ナッコプセ鍋を提供する専門店「サウィ食堂」は2026年9月、池袋・京都に新規出店しました。従来コリアンタウンなど特定エリアへの集中出店が目立った韓国料理業態が、そうした立地の制約を超えて成立し得ることを示す事例です。出店にはFC開発代行会社を起用しており、フランチャイズ展開を見据えた体制づくりも進んでいるとみられます。

単品特化フォーマットの多店舗展開も目立ちます。物語コーポレーションは「焼きたてのかるび」を2026年8月7日に39店目として出店しました。焼肉ファミレスでも牛角焼肉食堂のアニメコラボ、焼肉きんぐの「韓国市場」企画など韓国要素の取り込みが加速しています。

大阪・箕面の「和韓料理 プルコギ専門店 じゅろく」は2026年9月1日より新メニュー7種を投入しました。国産ブランド豚を食べ比べる「和韓サムギョプサルセレクトコース」や「特選和牛の和韓チャドルバギ」「蒸籠蒸し和韓シルクポッサム」など、和食と韓国料理を融合した独自コンセプトをさらに深掘りする内容です。2021年2月開業以来ランチ・ディナーとも繁盛が続く同店は、看板メニュー定着後も体験価値を追加し続ける姿勢を示しています。

一方、豊中では焼肉・ホルモン店がサムギョプサル専門店へ業態転換。業務スーパーの神戸物産は韓国居酒屋「ハンサン」で外食参入を加速し、将来のFC展開も視野に入れています。他方で、富山のシェア型フードホール内店舗は開業1カ月足らずで閉店、長野のテイクアウト専門店はコスト高騰で破産準備に入っています。韓国本国でも、キンパ専門チェーン「キムガネ」1号店が原材料高騰を背景に閉店、1000店超のフランチャイズ「ノルブ」が企業再生手続きを申請するなど、急拡大した外食フランチャイズが失速するリスクも改めて示されました。

八戸市では、ショッピングセンター「ラピア」内で営業していた韓国料理店「韓韓堂」が閉店した後、同市番町の路面店として2026年8月29日に「韓韓堂八戸店」を再出店しています。商業施設内テナントの退店が、そのまま終わりではなく立地を変えた再起につながった事例です。

さらに、デリバリー・テイクアウト専業の運営形態も広がりを見せています。2026年9月に札幌市白石区でオープンした「デリステーション札幌白石店」は、タコライス・韓国料理・和食など12の専門ブランドの商品を1拠点に集約するゴーストレストラン型テイクアウト店です。韓国料理は複数ブランドの一角として組み込まれており、実店舗を持たずとも韓国メニューを提供する経路が増えていることを示しています。


構造・原理:なぜ広がり、なぜ潰れるのか

コチュジャンや旨辛だれといった「味の記号」が明確で既存メニューに掛け合わせやすく、辛味・酸味は夏場の食欲減退期に需要が上がりやすいため季節限定商品として使いやすい特性があります。SNSでの見た目・話題性の高さも集客・販促のコンテンツになりやすい要因です。

開業数がピークを過ぎたという全国データは、新規参入の波が一巡したことを示唆します。都市部への拡散は続いており、話題性頼みからリピーター獲得を前提とした定番化への移行局面にあると考えられます。牛角焼肉食堂や焼肉きんぐのようなアニメIPコラボ・テーマ企画は、味の記号の分かりやすさとSNS拡散力を最大限利用した手法で、大手だからこその規模の経済が効いています。松屋の「豚キムチ定食」復活も同様に、自社製キムチという既存資産を活かして開発コストを抑えつつ話題を作る例です。

コリアンタウンなど特定エリアへの出店集中は、これまで韓国料理業態の暗黙の前提でした。サウィ食堂の池袋・京都出店は、専門性の高い一品業態であれば立地の看板依存を超えて需要を獲得できる可能性を示しており、出店戦略における立地選定の前提を見直す材料になります。

専門店の単独出店では別の力学が働きます。オーナーの出身国・内装のストーリー性、薬膳ポッサムや海鮮ホルモン鍋といった調理法の工夫、代表自身の原体験・偏愛を看板メニューに込める物語性など、開業ラッシュが一服した局面でこそ差別化が効いてきます。逆に一品料理・ドリンクを均一価格で提供する路線は、原価管理とオペレーションの標準化が前提となり、原材料費の変動を吸収しにくい弱点も抱えます。

既存の焼肉・ホルモン業態の設備や立地を活かしたまま看板を韓国料理に切り替える「業態リブランディング」、焼肉や海鮮と融合させる複合コンセプト型、日本料理と組み合わせる「和韓料理」も地方都市への出店戦略の一例です。じゅろくのように和韓融合コンセプトを軸に据え、産地・部位の食べ比べという体験価値を継続的に追加していく手法は、単品訴求からコース化・体験価値向上への進化として参考になります。大手外食企業が単品特化型フォーマットを開発し多店舗展開する動きも見逃せません。

加えて、実店舗を持たずキッチンだけを共有して複数ブランドの商品を配送・テイクアウトで提供する形態も広がっています。全国規模でUber Eats等に大量出店する事業者が、韓国料理を含む多ブランド展開の一角として組み込む例は、実店舗経営者にとってデリバリー・テイクアウト需要をめぐる競合環境そのものが変化していることを意味します。

商業施設内テナントは集客をショッピングセンター自体の来客数に依存する構造上、施設側の方針転換や集客低迷の影響を受けやすい面があります。八戸のケースのように、閉店を単なる終わりではなく立地転換の契機として捉え、路面店として出店コストや客層を見直す選択も現実的な打ち手の一つです。既存の人気メニューを引き継げれば、常連客の再来店にもつながりやすくなります。

韓国本国の「ノルブ」の経営破綻は、単品業態のブランド力だけでは長期の成長を維持しにくい実態を示す事例です。急拡大期に加盟店支援体制や収益構造を見直せなければ、経営環境の変化とともに急速に失速するリスクがあります。「キムガネ」1号店の閉店も、低価格・薄利多売業態は原材料費の上昇が利益率に直結しやすいことを示しています。売上が確保できていても材料費・人件費の高騰で創業当初から利益が出にくい構造のまま推移すると資金繰りが行き詰まる例もあります。

さらに、小売のスケールメリットをそのまま外食の原価構造に転用できる異業種参入は、単独店舗にとって競争環境そのものが変化する動きです。韓国料理は原価に見合う客単価設計と、辛味・専門性による差別化のバランスが問われる業態です。値上げ・原価の圧力は他業態と同様に強く、人手・賃金コストの上昇も利益体質を左右します。


経営の打ち手

1. 既存メニューへの掛け合わせ:看板メニューの味付け技術に韓国調味料を組み合わせ、期間限定商品として低リスクで投入する。過去に好評だったメニューを復活させる、既存の仕込み材料を組み合わせて新価格帯の商品を作る道も低リスクです。

2. 専門特化での差別化:専門性の高い一品を看板に据え、立地依存から脱却できるかを検証する。調理法にひと工夫加える方法や、オーナー自身の原体験・偏愛を看板メニューのストーリーに込める方法もあります。サウィ食堂のように、コリアンタウン以外での成功要因(味の再現性・メニューの分かりやすさなど)を分析し、自店の出店戦略に応用する方法も考えられます。

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