いま何が起きているか
2026年7月時点、スイーツ関連の話題は大きく4つの流れに集中しています。ひとつは桃・抹茶・ピスタチオといった旬素材を軸にした季節限定商品の一斉投入。もうひとつは人気ブランドやキャラクター、インフルエンサーとのコラボによる話題づくり。もうひとつが寿司店やうどん専門店、ハンコ店、弁当店など「本業」とは全く異なる領域からスイーツへ進出する動き。そして直近では、観光地店舗限定のご当地メニューや、和スイーツをインバウンド獲得の武器として位置づける専門ブランドの拡大も目立ってきました。
スシローは社内に専属パティシエ組織「スシローカフェ部」を持ち、月1回のプレゼンで新作を審査してから採用数点だけを店頭に出す仕組みを運用しています。丸亀製麺は初のスイーツ「うどんプリン」を投入し、マクドナルドは森永製菓とのコラボで「マックフルーリー チョコボール」など3種を発売しました。関西では脱ハンコの影響で売上が3割減した京都の老舗ハンコ店がどら焼き屋を新たに始めるなど、本業の需要縮小を受けて全く畑違いのスイーツ事業へ乗り出す個人店の動きも出ています。専門店の垣根を越えてスイーツが「サブメニュー」や「新規事業の柱」として組み込まれる傾向が強まっています。
構造・原理
スイーツが業態を問わず取り入れられる背景には、いくつかの構造的な理由があります。
- 原価と客単価のバランスが取りやすい:ドリンクやデザートは価格設定の自由度が高く、副収益源として機能しやすい
- SNS拡散力が高い:見た目の変化やインフルエンサー起用だけで話題化しやすく、集客・販促の起点になりやすい
- 季節性による飽き防止:桃・抹茶・ピスタチオなど旬素材を入れ替えることで、同じ看板メニューでも新鮮さを演出できる
- 参入障壁の低さ:調理設備や技術面のハードルが比較的低いため、本業と全く異なる業種からでも参入しやすい
この流れは商品開発の観点で見ると「本業の技術×話題性のある要素」を掛け合わせる方法として整理できます。焼き芋専門店「かいつか」が自社ブランド芋『紅天使』を使ったかき氷を投入し、干し芋・バウムケーキ・スプレッドなど複数の加工商品へ横展開している例は、単一素材専門店が看板食材を軸に商品ラインを増やしていく典型的な形です。一方、京都のハンコ店がどら焼き屋を始めた例のように、本業の技術を全く活かさず、需要縮小への対応として新しい収益源をゼロから立ち上げるケースもあり、出店・閉店・M&Aの文脈でも本業一本足からの脱却として捉えられます。
コラボの規模には幅があります。渋谷4施設が33店舗を横断して「ダンジョン飯」とコラボし、レシピカード収集や周遊特典で施設全体の滞在時間を伸ばした例は大型商業施設ならではの仕掛けです。一方、夜アイス専門店「21時にアイス」がSNSフォロワー60万人超のグルメ系インフルエンサーと第2弾コラボを実施した例のように、単一のインフルエンサーとの継続コラボで話題化を積み重ねる手法は、小規模店でも取り組みやすい形です。ジェラート ピケ カフェのようにアパレル発のカフェ業態が同一IPと年単位で継続コラボし、グッズ併売まで組み合わせる例も、話題化を一過性で終わらせない工夫として参考になります。
またコメダ珈琲店の姉妹ブランド「コメダ和喫茶おかげ庵」が国分寺に19店舗目を出店し、2030年までに50店舗体制を掲げている動きは新業態・トレンドとして注目できます。同社は主力の洋風カフェではなく、抹茶やおだんご、和のシロノワールといった和スイーツをインバウンド獲得の武器と位置づけており、訪日客が珈琲よりあんこなどの和の甘味を好む傾向を取り込む狙いがあります。
経営の打ち手
季節限定メニューは、旬素材をそのまま使うだけでなく、既存の看板商品に季節要素を少し加える方法でも成立します。コメダ珈琲店の「ブランノワール」のように、定番商品の見た目だけを変えて再提案する手法は、原価を大きく変えずに話題性を作れる点で小規模店でも応用しやすい発想です。
コラボ企画は、大手ブランドとの契約が難しい場合でも、地域の菓子店や食品メーカー、あるいはSNSで発信力のある個人との小規模な提携で代替できます。夜アイス専門店の事例のように、インフルエンサーとの継続コラボはリピーターやファン層の形成につながりやすく、一度きりで終わらせず年単位で関係を築く道もあれば、自店の常連客や地域の発信力のある個人と組む、より身近な形で始める選択肢もあります。セサミストリートマーケットのように、パーティープラン(イートイン・予約制)と単品テイクアウトの二段構えで価格帯を分ける構成も、季節イベントの限定メニューを組む際の型として応用できます。