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喫茶店・カフェ経営のいま:値上げ・秋商戦・多角化の動き

業態別/喫茶店・カフェ
最終更新:2026年9月12日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

2026年9月時点、カフェ・喫茶業態では「値上げの連鎖」「価格帯のK字型再編」「秋商戦の限定メニュー競争」「本業以外への多角化」が同時進行しています。加えて、市場全体では客数が戻る一方で客単価が前年割れするという新しい兆しも出てきました。

ドトールコーヒーは7月23日から約1,200店で価格改定を実施し、ブレンドコーヒー(S)は280円から300円になりました。コロワイド傘下のC-Unitedはカフェ・ベローチェ、カフェ・ド・クリエ、珈琲館など全ブランドで9月1日から10月中旬にかけ順次値上げし、ベローチェのブレンドコーヒーRは350〜450円と、立地によってはスターバックスを上回る水準になりました。全国一律で値上げ幅を抑えるドトールと、立地別に値上げ幅を広げるベローチェとで戦略が明確に分かれています。

秋商戦の限定メニューは9月に入りさらに拡大しています。スターバックス・ドトール・タリーズ・サンマルクカフェ・カフェ・ベローチェの主要5ブランドに加え、コメダ珈琲店・モスカフェ・すき家のカフェ業態まで含めると、さつまいもテーマの新商品は少なくとも10ブランド以上から発表されました。MARFA CAFEや麻布台ヒルズ内のフラワーカフェ、台湾カフェ「春水堂」もさつまいも・栗を使った秋限定メニューを投入し、すき家のテイクアウト向け「SUKICAFE」でも焼き芋シェイクを追加するなど、業態を横断した動きが続いています。サンマルクカフェは「5種のフルーツスムージー」を含む新作も投入し、KOI Theなど話題のティーブランドもフルーツ系ドリンクを強化しており、季節の変わり目に合わせた商品開発サイクルの速さが目立ちます。カフェ・ド・クリエも夏季向けに既存の人気デザート「珈琲ゼリー」をドリンクにアレンジした新商品を投入するなど、既存メニューの資産を活用した季節限定商品づくりが業界内で広く採られています。

ホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、2026年7月の外食市場規模は東名阪3圏域計で3,055億円、前年同月比101.4%と2カ月ぶりに回復しました。延べ外食回数は前年比101.5%と好調でしたが、客単価は前年比マイナス2円と5カ月ぶりに前年割れしています。喫茶店・カフェは19年同月比125.2%と、ファストフードに次いでコロナ禍前を大きく超える回復を見せており、業態としての底堅さがうかがえます。

一方で、コーヒー豆など原材料価格の高騰は大手チェーンだけでなく中小の喫茶店・専門店にも及んでおり、加えて韓国発の低価格・大容量カフェやコンビニ、外食チェーンといった新たな競合が存在感を増しています。さらに、愛知県発の無人カフェ「セルフカフェ」が9月12日に世田谷区へ初出店し、全国60店舗・月間利用者9万人規模まで拡大するなど、人手を介さずドリンク1杯+作業空間という価値提供に絞った新業態も存在感を強めています。中小店にとってはコスト構造の見直しと差別化の両方が同時に求められる局面です。

価格帯そのものの再編も進んでいます。松屋PREMIUM・無添蔵・タリーズ「PRIME FIVE」など上位業態の拡大と、サンマルクカフェの390円モーニングのような大衆業態拡大が同時に起き、外食全体でK字型の構造が広がっています。UCCグループの上島珈琲店は9月1日、創業地である東京・神保町に再オープンし、原点回帰を打ち出しました。

出店戦略の観点では、イートアンドグループのアールベイカーが9月4日、東京・品川に6坪の超小型モデル「R Baker」を開業しました。福岡発の株式会社peace putは9月11日、「AMAM DACOTAN」と「I'm donut?」の人気商品を集約したテイクアウト専門スタンド「dacō?清流公園」を博多区・中洲にオープンしています。複数の人気ブランドを持つ企業が、既存の商品資産を編集し直して小型・テイクアウト特化の新業態に展開する動きの一例です。

本業以外への多角化も目立ちます。八王子では「うかい」が菓子工房併設型カフェ「アトリエうかい Cafe&Factory HACHIOJI」を9月7日にグランドオープンし、製造工程を見学できる体験型業態として展開します。横浜のコーヒースタンド「PEACH COFFEE」は9月1日から企業・団体向けに専用ポットでコーヒーを届ける「PEACH COFFEE DELIVERY」を開始し、来店客中心の営業から法人という新たな顧客層へ収益源を広げています。喫茶店チェーンの東和フードサービスは2026年4月期に増収減益となった一方、続く2026年5〜7月期の四半期決算では税引き利益が前年同期比14.8%増と改善が見られましたが、通期の業績予想は据え置かれています。

商業施設側の動きとしては、仙台PARCOが今秋から冬にかけて全16店舗をリニューアルし、開業10周年のPARCO2ではレストランフロア「パルイチ」を大幅刷新、飲食テナントが新規出店予定です。商業施設が飲食フロアの拡充を集客の核として位置づける動きは各地で続いています。

構造・原理

原材料・物流・人件費の上昇という共通要因は業界全体に及んでいますが、大手チェーンの対応は一枚岩ではありません。「分かりやすさ・安心感」を優先する全国一律型と、「立地に応じた利益確保」を優先する地域別価格型に戦略が分かれています。値上げ・原価の観点では、どちらを選ぶにせよ数字に基づいた判断が前提になります。

ホットペッパー総研の調査が示すように、客数(来店回数)の回復が続く一方で客単価が前年割れする局面が5カ月ぶりに現れています。喫茶店・カフェはコロナ禍前を大きく超える回復を見せた数少ない業態ですが、単価前年割れという逆風が業態全体に及ぶ可能性も念頭に置く必要があります。

10ブランド以上が同時期にさつまいもテーマへ乗った動きは偶然ではなく、秋の定番食材として市場全体が学習した「勝ち筋」に各社が揃って乗った結果と見るのが自然です。仕入れコストが比較的安定していること、写真映えしやすいこと、「秋らしさ」を説明抜きで伝えられることといった条件が揃う食材は、企画担当者にとって外れにくい選択になります。カフェ・ド・クリエのように既存の人気商品をドリンクへアレンジする手法も、開発コストを抑えながら話題性を作る型として業界内で定着しています。個人店にとっては、この一斉投入によって「差別化の基準点」が上がっている点を踏まえる必要があります。

同時に、コーヒー豆の原材料高騰は中小店にも及び、韓国系低価格カフェやコンビニコーヒー、さらには無人カフェ「セルフカフェ」のような人手を介さない業態の拡大という多方向の圧力が生まれています。無人型モデルは接客や滞在時間管理を人に頼らず、ドリンク1杯+作業空間という価値に絞ることで、賃料や人件費の負担構造そのものを変えている点が特徴です。これは単なるコスト増ではなく、価格帯・提供価値の異なる複数のプレイヤーが同じ顧客の可処分時間を奪い合う構図への変化と捉えるべきです。大手が価格・空間・限定メニューで競争する一方、中小店は豆の調達・焙煎方法の見直しや、数値化しにくい空間・接客での差別化を同時に求められる構造です。上位業態の拡大と大衆業態への進出が外食全体でK字型に進行し、資本と出店エリアの両面で「規模を持つ側」への集約が進む中、出店・閉店・M&A大手・チェーン動向の観点でも、価格・資本・エリアの三方向で二極化が同時進行していると捉えられます。

R Bakerの6坪モデルやdacō?の複数ブランド集約型テイクアウト業態のように、既存の資本・ブランド資産を活用しつつ小型・省スペースで出店密度を高める手法が広がっています。うかいの「アトリエうかい」やPEACH COFFEEの法人向けデリバリーも、いずれも本業の強みを隣接需要に振り向ける業態転換・多業態化の一例といえます。仙台PARCOのような商業施設のリニューアルが飲食フロア拡充を核に据える動きも、周辺の中小店にとって人流変化という外部要因として無視できません。

人手不足が続く現場では、能力のあるスタッフを手放したくないという事情が採用・定着の判断を左右します。あるカフェチェーンの店長は、体臭など個人の身体的特徴に関わる問題で他のスタッフが立て続けに退職する状況に直面しながらも、人権上の配慮から簡単に注意・解雇できないという難しい立場に置かれている実例が報告されています。デリケートな問題ほど指摘しづらく、店長一人が抱え込みやすい構造がある点は、人手・賃金の課題を考える上で見落とされがちな側面です。

経営の打ち手

価格戦略については、全国一律で値上げ幅を抑える道もあれば、立地別価格で利益確保を徹底する道もあります。ただし客単価の前年割れが業界全体で始まっていることを踏まえると、単価を上げるだけでなく来店頻度・回数の増加を軸に据える戦略も検討に値します。豆の高騰に対しては、調達方法や焙煎方法を見直してコストを吸収する道、価格を維持しつつ客単価を上げる商品構成に変える道、空間や接客といった数値化しにくい価値で差別化を図る道など複数のアプローチが考えられます。

季節限定メニューは、大手のように複数品種の食材を使い分けて話題性と単価アップを両立させる道もあれば、芋・栗・果実のような定番テーマに相乗りしてSNS発信の話題を作る道もあります。カフェ・ド・クリエのように既存の人気商品をアレンジして再構成する道は、開発コストを抑えながら話題性を作る現実的な選択肢です。ただし、大手10ブランド以上が同じ食材で一斉に競う状況では、同じ土俵で戦うと埋没しやすいため、調理法や組み合わせで独自性を出す工夫が必要です。北海道新得町のカフェ雑貨店「THE・YARD」がベトナム混ぜご飯など変わり種メニューを導入し好評を得ている例のように、地方の小規模店でも既存の物販や客層との相性を見ながら少量から試験導入する方法は参考になります。商品開発の観点では、記念日や地域食材を軸に、背景をメニュー表やSNSで明記して価値を伝える方法も有効です。

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