フクタンの経営ノート
飲食note アプリ版毎日のニュースで、読めば読むほど、飲食経営が強くなる入手
飲食note経営ノート › ラーメン

ラーメン業界の値上げ・倒産・出店競争はいま何が起きているか

業態別/ラーメン
最終更新:2026年9月8日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

ラーメン市場は「成長」と「淘汰」が同時に進む局面にあります。市場規模は1兆円に迫り、心理的な壁だった「千円の壁」は事実上崩れました。一方で2026年上半期のラーメン店倒産は過去最多を記録し、東京商工リサーチによると2026年7月の飲食業倒産は112件(前年同月比6.6%増)で、7月として1997年以降最多となりました。「物価高」倒産が23件、「人手不足」倒産が13件、「人件費高騰」倒産が12件と急増し、居酒屋・ラーメン店・中華料理店で目立ちます。

業界全体の売上は、日本フードサービス協会調査で2026年7月の外食産業売上が前年同月比6.8%増、客数3.2%増、客単価3.5%増でした。麺類業態は低価格業態の好調と店舗増を背景に7.2%増でしたが、コラボ・限定商品への依存が客足を左右している点には注意が必要です。

大手チェーンの決算では二極化が鮮明です。一風堂を運営する力の源HDは2026年4〜6月期に増収ながら純利益が前年同期比7割減となり、海外店舗事業の利益は前年同期比79.6%減でした。対照的に幸楽苑は好調が続いており、2026年8月時点の既存店売上高は前年同月比6.7%増、客数も5.0%増と伸びました。値上げ一辺倒ではない集客の強さがうかがえます。松屋フーズも買収で加わった「舎鈴」の東海初出店を進める一方、新ブランド「参厘舎」で朝7時からの「朝らーめん」提供を開始するなど、既存店の枠を超えた成長の模索が続いています。

「町田商店」の動きも注目に値します。過去の値上げで客離れを招いた反省を踏まえ、2026年8月は客単価の上昇を前年比1%以内に抑える価格戦略に転換し、客数が増加に転じました。値上げ幅を抑えて客数を取り戻す軌道修正の事例として位置づけられます。

注目すべきは、大衆食堂・レストランの定食チェーンが逆転している構図です。大戸屋HDは2026年3月期に売上高18%増・営業利益29%増と好調で、やよい軒も同様の勢いです。かつて割高とされた定食業態が、ラーメン1000円時代の中で相対的にコスパの良い選択肢として見直されており、麺類業態にとって無視できない競合軸が生まれています。

構造・原理

市場が伸びているのに個店の倒産が増える背景には、価格帯の「中間層」の縮小があります。千円の壁が崩れたのは「高くても納得感のある一杯」への支持拡大を意味し、品質でもコストでも差別化しにくい中価格帯は埋没しやすくなっています。定食チェーンの好業績は、その中間層の一部が「品数・栄養バランスで割安感を得られる業態」へ流出している可能性を示しています。

幸楽苑の増益は既存店の質を高める投資から生まれ、町田商店の客単価抑制と客数回復の組み合わせは過度な値上げが客足を遠ざけるリスクを裏付けます。松屋フーズの「増収減益」や力の源HDの純利益7割減は、出店・買収による拡大と収益体質の間にギャップが生じやすいことを示唆します。一風堂の北海道再進出も「実績のあるエリアへの再挑戦」という形でリスクを抑えた拡大戦略と読めます。

こうした中、山岡家・スガキヤに続いて松屋フーズ「参厘舎」が朝7時からの朝ラーメン提供に踏み出したのは、既存の時間帯(昼・夜)での客数競争が激化する一方、ビジネス街の朝食という手つかずの時間帯に成長余地を求める動きと位置づけられます。競合軸が価格帯や業態間だけでなく、時間帯の開拓にも広がりつつある点は見逃せません。

出店戦略のもう一つの軸として、鉄道会社が沿線価値向上のために駅直結型の複合商業施設へ飲食テナントを積極誘致する流れが強まっています。一風堂の新鎌ヶ谷駅前出店は、くら寿司・ロイヤルホストなど知名度の高いチェーンと同時に集まる形で実現しており、鉄道会社主導の再開発が有力チェーンの出店先として定着しつつあることを示します。

倒産データでは「人手不足」倒産と「人件費高騰」倒産が急増しており、物価高だけでは説明できない構造課題が浮き彫りです。人手・賃金の課題は業態を問わず重くなっています。

原材料調達の面では、鶏ガラや豚骨など出汁の基礎となる副産物食材の値上がりが続いています。習志野の人気ラーメン店の事例では、希少部位「豚パイカ(肩バラ先軟骨)」を具材とスープだしの両方に活用することで原価を抑え、1000円以内の価格を実現しています。値上げ・原価対策の選択肢が価格改定だけではないことを示します。

ファミリー層の取り込みも新たな競争軸として顕在化しています。一風堂は駅直結施設出店とセットでガチャガチャのコイン付き「お子さまラーメンセット」を新設し、丸源ラーメンも子ども用チェアやミルク用のお湯提供が評判を集めており、新業態・トレンドとしてラーメン業態全体が「単身男性客中心」というイメージから脱却しつつあります。

キャラクターIPを活用したコラボメニューや地域イベント型の集客も一つの型として定着しつつあります。中野の「熱狂ラーメン祭」は3回目を迎え、昨年は7日間で約3万杯を販売した実績があります。業態転換・多業態化(M&A型成長)がラーメン業態そのものを超えて広がる段階に入ったことがうかがえます。

経営の打ち手

中価格帯で戦ってきた店ほど、早期にプレミアム化か効率化かの方向を決める必要があります。

この続きは有料会員限定です

飲食noteの有料プラン(月々2,980円/年間一括20,400円・5ヶ月ぶんお得/初めてご契約の方は7日間無料トライアル)で、経営ノートの全文とAIコンサル「フクタン」が使い放題になります。

飲食noteで続きを読む
この論点を深掘りした特集
根拠にした主なニュース
関連する経営ノート

飲食noteは、業界ニュースとAIコンサル「フクタン」の解説を毎日無料で読める、飲食経営者のためのメディアです。無料会員になると、自分の業態を選んで関係するニュースを前に出せます。