フクタンの経営ノート
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ラーメン業界の客数二極化と脱・専業の動き

業態別/ラーメン
最終更新:2026年10月26日 飲食note・フクタンの経営ノート

いま何が起きているか

ラーメン市場は「客数で伸びる企業」と「値上げ頼みで踊り場を迎える企業」への二極化が鮮明です。2026年9月時点で丸千代山岡家は中間期営業利益が前年同期比27.0%増、8月度既存店売上・客数ともに9.1%増と過去最高を更新しました。幸楽苑は9月度国内直営既存店売上高が前年同月比10.6%増と40カ月連続で前年実績を上回り、10月6日には「味噌とんこつらーめん」(860円)も投入しています。ギフトホールディングス(町田商店)も2026年10月期9月度で全店売上高が前年同月比25.8%増、店舗数は前年同月比65店舗増の329店舗に達しました。日高屋はアルコール比率の低下を背景に690円「濃厚豚骨醤油ラーメン」で“節約外食”需要の取り込みを明確化し、栃木・群馬・茨城などロードサイドへの出店も強化しています。

一方で複数業態を抱える企業の苦戦も目立ちます。2026年10月19日、ラーメン・油そばなど複数ブランドを展開するガーデンが中間決算で営業利益7割減、通期予想も下方修正しました。ただし同社は10月23日からグループ累計222店舗達成を記念した「総力大感謝祭」第2弾を開始しており、業績面の苦戦と現場の集客施策強化が併走している点が特徴です。クリエイト・レストランツ・ホールディングスも2027年2月期中間決算(3〜8月)で増収ながら営業利益16.6%減となり、悪天候に加えSFPホールディングス合併関連の一過性費用が響いています。複数業態・M&Aによる成長戦略が、必ずしも利益率の向上に直結しないことを示す事例です。

M&Aによる業態拡大は継続しています。吉野家ホールディングスは2034年度までに「ラーメン提供食数世界一」を目指す方針を掲げ、宝産業(2024年)・キラメキノ未来(2025年)の子会社化を経て米欧豪展開にも意欲を示しています。地域小売大手のイズミは10月13日、汁なし担担麺「キング軒」を展開するキングファクトリーグループ(全国21店舗)の子会社化を発表しました。京都の魁力屋は10月19日に広島県東広島市へ3店舗目を出店し、業態転換・多業態化(M&A型成長)の裾野が広がっています。既存ブランドの横展開も続き、福岡の56フーズ・コーポレーションは16年続く「ざいとん」を博多バスターミナルに新規出店する予定です。

仕入れ環境では、モヤシ生産者の廃業・倒産が相次いでいることが明らかになりました。薄利多売の商習慣と燃料費高騰が背景とされ、ラーメン店の原価構成に影響しうる供給不安として注目されます。また、海外展開リスクも顕在化しています。2026年10月17日、フランス各地での物価高騰抗議デモが暴徒化し、パリの一風堂店舗前で治安部隊との衝突が発生、催涙弾の煙が店内に流入する事態となりました。海外出店は現地の社会情勢リスクと常に隣り合わせであることを示す事例です。

構造・原理

市場が伸びているのに中堅・個店の倒産が増える背景には、価格帯の「中間層」の縮小と、単一業態・単一価格帯のまま規模だけを維持してきた中堅チェーンの構造転換の遅れがあります。丸千代山岡家・日高屋・幸楽苑・町田商店に共通するのは、値上げに頼らず客数そのものを伸ばす戦略で、期間限定メニューの連投や低価格看板商品による二段構えの価格設計が株式市場からも好感される傾向にあります。

一方、二刀流・多業態化は万能ではありません。ガーデンの営業利益7割減、クリエイト・レストランツの一過性費用による減益は、複数ブランド運営がオペレーションの複雑化や原価構造の違いを招き、規模拡大がそのまま収益性に結びつかないリスクを示しています。それでも節目の店舗数達成を機にアプリ会員施策や特価キャンペーンを打ち続ける姿勢は、業績の苦しい時期こそ客数の確保を優先する判断とも読めます。吉野家HDやイズミのように、製造機能の内製化や地域小売の店舗網・物流基盤を活かした買収は統合効果を出しやすい一方、ブランド統合のコストを見誤ると収益を圧迫します。

原材料面でもリスクが顕在化しています。モヤシのように長年ほぼ価格据え置きで取引されてきた安価食材は、生産者側の採算悪化で供給自体が不安定になりつつあり、低価格メニューを多く抱える業態ほど影響を受けやすい構造です。値上げ・原価の論点は、単なる仕入れ値上昇だけでなく「供給元そのものの持続可能性」にまで広がっています。決済面でも構造的な遅れがあります。決済代行会社の調査(2026年7月、東京都在住のラーメン店月1回以上利用者600人対象)では、現金利用者の73.8%が「全決済手段に対応していればキャッシュレスを使いたい」と回答し、キャッシュレス派の2人に1人が決済非対応を理由に入店を断念した経験があることも判明しました。狭小店舗・券売機中心の運用が根強いラーメン業態特有の機会損失が可視化された形です。人手・賃金の課題も業態を問わず重くなっています。

経営の打ち手

中価格帯・中堅規模で戦ってきた店ほど、プレミアム化か効率化かの方向を早期に決める必要があります。

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